脳卒中後遺症者と担当理学療法士が認識している外来理学療法目標の相違:回復期後期、維持期前期、維持期後期別の比較検討
スポンサーリンク
概要
- 論文の詳細を見る
【目的】外来理学療法は脳卒中後遺症者に対する退院後の生活再構築を支援するための重要な手段の一つであるが、吉野ら(2003)の調査によると、外来理学療法に対する患者の期待と理学療法士(PT)の役割意識とに相違があり、長期化が問題となっていることが示された。吉野らの調査は患者と担当PTをペアリングしたものではなかったので、本調査の目的は、患者と担当PTをペアリングして、それぞれが認識している外来理学療法目標の相違を発症からの時期別に検討することとした。尚、外来理学療法の最終目標は全人的リハビリテーションを達成するためのものであり、国際生活機能分類の心身機能・活動・参加および環境因子に渡る広い内容を含むものとして捉えた。<BR>【方法】対象は26組の外来理学療法を受けている脳卒中後遺症者(患者)とその担当PTとした。内訳は、発症から6-9月(回復期後期群)6組、10月-3年(維持期前期群)10組、4-6年(維持期後期群)10組であった。対象者には調査の概要と個人情報の保護について文書および口頭にて説明し、協力の同意を得た。各対象者が認識している外来理学療法目標の把握は、脳卒中後遺症者の外来理学療法目標60項目(上岡ら、2005)を、自分の目標にあてはまるか否かにより9段階(+4から-4)に正規型の分布をなすように分類させた。これをもとに因子分析法の一つであるQ技法によって、各群の患者および担当PTが目標と認識している項目を抽出し分析した。<BR>【結果】患者はどの群においても「手足がもっと良く動くようになりたい」など運動機能改善と歩行改善を目標と認識していた。担当PTは、回復期後期群は「病院以外の外出機会を増やす」など外出機会増加と歩行改善および運動機能・活動維持のための自己管理力獲得を、維持期前期群は「生活に必要な体力を向上・維持させる」など運動機能・活動維持および参加促進を、維持期後期群は「旅行に行けるようにする」、「趣味活動ができるようにする」など主に参加促進を目標と認識していた。<BR>【考察】今回、吉野らの調査結果を検証し、加えて、担当PTは維持期脳卒中後遺症者の外来理学療法の目標を参加促進と認識していることが示された。結果より、どの時期においても患者と担当PTが認識している目標には相違が認められた。担当PTが認識している目標を患者と共有し目標を達成するためには、外来理学療法開始時から継続して目標の共有化を図る働きかけが必要であると考えられた。今後の課題は、患者と担当PTが外来理学療法目標を継続的に共有するための方法を検討することである。<BR>【文献】1)吉野貴子、飯島 節:外来理学療法に対する脳卒中後遺症者の期待と理学療法士の意識との相違;理学療法学2003,30(5):296-303. 2)上岡裕美子、吉野貴子・他:外来理学療法目標に対する患者と理学療法士の認識の相違を測定するための予備調査;理学療法学(suppl)2005,32(2):537.<BR>
- 公益社団法人 日本理学療法士協会の論文
公益社団法人 日本理学療法士協会 | 論文
- 療養型病院における廃用症候群の予後予測
- 髄腔内バクロフェン治療(ITB)後の理学療法:―歩行可能な症例に対する評価とアプローチ―
- 理学療法士の職域拡大としてのマネジメントについて:―美容・健康業界参入への可能性―
- 脳血管障害患者の歩行速度と麻痺側立脚後期の関連性:短下肢装具足継手の有無に着目して
- 健常者と脳血管障害片麻痺者の共同運動の特徴:―異なる姿勢におけるprimary torqueとsecondary torqueの検討―