足踏みテストの特性と有効性
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概要
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【目的】高齢者に対する転倒予防教室などの体力測定には、簡便に身体機能が評価できる内容が求められている。そこでその測定項目の1つとして、独自に考案した足踏みテストを実施してきた。本研究では女性を対象に、足踏みテストと他の測定項目や加齢との関係、および高齢者では転倒経験の有無との関係についても検討したので報告する。<BR>【方法】対象女性は278名で、地域で実施された健康教室や転倒予防教室に参加した中高年者と大学生である。平均年齢は60.1±22.9歳(20~90歳)であった。そのうち高齢女性は179名で、平均年齢は74.6±5.4歳(65~90歳)であった。測定項目は足踏みテスト、開眼片足立ち、座位ステッピング、ファンクショナルリーチ、握力、垂直跳び、全身反応時間、長座位体前屈である。高齢者の14名については5mの最速歩行時間を測定した。教室参加者については教室が開始された時点でのデータを使用し、高齢者については過去1年間の転倒の有無について問診した。<BR> 足踏みテストとは、大腿が水平になるまで挙上した足踏みを10秒間にできるだけ速く行い、挙上した回数を測定した。上肢動作については特に規定せず自由とした。<BR> 足踏みテストと年齢、および他の項目との関係について相関を求め、転倒経験があった群となかった群の比較は対応のないt検定を用い分析した。統計処理は危険率5%未満をもって有意とした。<BR>【結果】足踏みテストは加齢に伴い減少しており、年齢との間に高い相関を認めた(p<0.001)。他の項目との関係では開眼片足立ち、座位ステッピング、ファンクショナルリーチ、握力、垂直跳び、最大1歩幅とは正の相関が、全身反応時間とは負の高い相関が認められた(p<0.001)。長座位体前屈とは相関は認めなかった。高齢者14名の歩行速度と足踏みテストとは、負の高い相関が認められた(p<0.001)。<BR> 高齢者のうち転倒経験があった者は35名で19.6%であり、足踏みテストの結果は16.6±4.0回であった。転倒経験のなかった群は18.1±3.5回と、あった群より有意に高い値を認めた(p<0.05)。<BR>【考察】足踏みテストの運動機能要素として下肢筋力、平衡機能、敏捷性が主にあげられるが、結果より柔軟性以外の筋力、瞬発力、敏捷性、平衡性と高い相関を認めたことは、これらの能力を反映していることが示唆される。また歩行速度が測定できた例では、速度の延長に伴い減少が認められ、歩行能力の評価要素をも反映していると考える。<BR> 本テストは加齢に伴い減少が認められ、特別な道具も技術の習得も必要とせず簡便であり、高齢者の体力測定項目として有用であると考える。さらに転倒の有無により値に優位差が認められたことは、転倒リスクの発見や転倒予防の指標として使用できる可能性があると考える。<BR>【まとめ】女性を対象に足踏みテストを実施し、高齢者の体力測定や転倒予防の指標として使用できる可能性が示唆された。
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公益社団法人 日本理学療法士協会 | 論文
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