当院回復期リハビリテーション病棟における転倒患者のADL改善度
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概要
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【はじめに】高齢者の転倒予防は近年,様々な場所で取り組まれている.しかし,転倒予防に取り組んでも,転倒者の特性については不明な点であれば,具体的な転倒予防対策を立てにくく,環境調整のみに頼りがちになる.当院の回復期リハビリテーション病棟(以下,回復期リハ病棟)においても,例外ではない.そこで今回,回復期リハ病棟入院における転倒の特性を知るために,入院時,退院時のFIM改善度を比較し,検討した.<BR>【対象と方法】対象は,平成17年4月1日から7月30日の間に,当院回復期リハ病棟を退院した患者83名とした.入院期間中に転倒した患者13名(平均年齢75.8±12.8歳)を転倒群,転倒しなかった患者70名(平均年齢69.5±15.1歳)を非転倒群とした.各患者の退院時FIMの得点から入院時のFIMの得点を引き,改善得点を算出した.転倒群,非転倒群の改善得点をMann-WhitneyのU検定により2群間を比較した.統計処理はSPSS 11.5J for windows(エス・ピー・エス・エス社製)を用いた.<BR>【結果】2群間に差の認められたのは以下の項目であった.セルフケアは,食事:転倒群,0.7±0.8点;非転倒群,0.2±0.8点(<I>p</I>>0.001)・整容:転倒群,1.5±1.2点,非転倒群,0.4±1.0点(<I>p</I>>0.001)・更衣・上半身:転倒群,2.1±2.0点;非転倒群,0.6±1.2点(<I>p</I>>0.01)・更衣・下半身:転倒群,2.8±2.3点;非転倒群,1.1±1.6点(<I>p</I>>0.01)の項目であった.移乗は,ベッド・椅子・車椅子:転倒群,1.8±1.0点;非転倒群,0.9±1.3点(<I>p</I>>0.01)・トイレ:転倒群,1.8±0.8点;非転倒群,1.1±1.5点(<I>p</I>>0.01)の項目であった.移動は,歩行・車椅子において転倒群,1.8±1.1点;非転倒群,0.9±1.3点(<I>p</I>>0.05)の項目であった.社会的認知は,問題解決:転倒群,0.5±0.5点;非転倒群0.3±0.7点(<I>p</I>>0.05)の項目であった.合計は転倒群,22.0±8.8点;非転倒群,14.0±9.8点(<I>p</I>>0.01)であった.<BR>【考察】転倒群は非転倒群と比較し,多くの項目においてFIM得点の改善が認められた.特に,セルフケアと移動の項目の多くに改善項目が多かった.その理由として,転倒群は,自立していない動作を一人で行ったり,環境整備の調整不足による転倒が考えられる.一方,非転倒群は,入院当初から移乗や移動が自立しており,入院時より転倒の危険性が少ないか,状態が安定しており,統一したケアが行き届いていると考えられる.したがって日々のADLの変化に着目し,FIMの改善が予測される患者には,早急に転倒予防の対策が,回復期リハ病棟の転倒予防の手段の一つと考えられる.<BR>
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公益社団法人 日本理学療法士協会 | 論文
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