シルバーカーを使用している高齢者の身体機能について
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概要
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【目的】シルバーカーを歩行補助具として使用している高齢者は多い。しかし、理学療法士が身体機能を考慮して適用させることは少ない。そこで、シルバーカーを日常使用している者を対象に、歩行速度や立位バランスといった身体機能を評価して、シルバーカー使用者の現状についての検討を行った。<BR>【対象】日頃シルバーカーを使用している高齢者女性32名とした。内訳は外来通院者1名、デイケア利用者9名、デイサービス利用者15名、施設入所者7名である。平均年齢は87.1±5.3歳、シルバーカーの平均使用期間83.2±77.0ヶ月であった。ほとんどが入浴以外自立しており、外出する機会の多い者も存在した。<BR>【方法】対象者の立位バランス機能として片脚立ち・閉脚立位の保持時間、歩行能力としてシルバーカー使用時の5m直線の最大歩行速度(シルバーカー歩行)、Timed Up and Go Test(TUGT)を測定した(各3回測定)。対象者にシルバーカー以外の歩行手段(例えば、歩行補助具不要な独歩、T字杖歩行、手引き歩行など)はどこまで可能かを問い、その歩行手段における最大歩行速度とTUGTも測定した。その他、面接により、シルバーカーを使用した動機、不満の有無も聴取した。<BR>【結果】片脚立位が左右何れかで可能な者は9名で、保持時間の平均は6.3±5.5秒であった。閉脚立位の保持は平均47.3±19.2秒、シルバーカー歩行速度42.0±17.8m/分、TUGTは27.6±16.0秒で、全例可能であった。シルバーカー以外の行いやすい歩行としては、独歩7名、T字杖23名、手引き歩行が2名(χ<SUP>2</SUP><BR>検定でp<.01)で、有意にT字杖が多かった。これらの歩行速度は35.6±16.7m/分、TUGTは26.6±14.6秒で、シルバーカー歩行の速度よりも有意(p<.01)に遅かったが、TUGTに有意な差はなかった。シルバーカー以外で選んだ独歩、T字杖歩行、手引き歩行群で各測定値に差があるか検定(Kruskal-Wallis検定)したが、有意ではなかった。<BR>使用の動機(重複回答)で多かったものは「家族・友人から勧められて」19名、「歩きやすいから」18名であった。不満の有無は「不満なし」が27名であった。「シルバーカーは疲れ難い」20名という回答もあった。<BR>【考察】T字杖歩行以上の者であれば、シルバーカーを適用させても良いと考える。特に片脚立位などのバランス機能が低下している者には安全な補助具であると考えた。しかし独歩、T字杖、手引き歩行の可能な者で身体機能を比較しても差が認められず、適用には社会的環境要因や安心感といった心理的な要因も考慮した方が良い。今回の結果から断定的な結論は得られず、測定項目・症例数の増加、対照群との比較などを行って検討を進めていく必要がある。<BR>
- 公益社団法人 日本理学療法士協会の論文
公益社団法人 日本理学療法士協会 | 論文
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