褥瘡患者に対する理学療法士の関わり:褥瘡発生率低下を目指して
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概要
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【はじめに】平成14年4月の診療報酬改定による「褥瘡対策未実施減算」の導入に伴い、当院でも褥瘡対策委員会(以下、委員会)を設置した。褥瘡治療・予防には、栄養やリハビリが不可欠という認識のもと、理学療法士(以下、PT)も委員に加わった。現在では褥瘡に対する知識も深まり、徐々にPTとしての役割を見出す事が出来てきた。今回は、委員会でのPTの役割及び、取り組みによる褥瘡発生率の変化を調査した。<BR>【活動内容】a)褥瘡回診<月1回>:難治患者の治療計画の見直し b)車椅子用除圧マットの検討:9種類のマットからの選択 c)各部署勉強会<PT:「キネステティクポジショニングについて」・「車椅子座位のポジショニング指導」> d)症例検討 e)退院後の生活指導 f)地域の勉強会参加<BR>【対象・方法】平成14年9月から、平成17年9月までの当院入院患者を対象として、院内発生数・褥瘡有症率・推定発生率の変化を調査し、委員会活動開始からの1年半(A群)と、活動内容の拡大が見られた1年半(B群)の2群間においてt検定を用いて比較検討を行った。<BR>【結果】A群に対してB群の院内発生数の減少がみられた(p<0.05)A群に対してB群の褥瘡有症率・推定発生率の低下がみられた(p<0.01)<BR>【考察】今回の調査において、他職種との連携による委員会での活動内容の拡大が、院内褥瘡発生率低下に繋がっていることがわかった。委員会での活動開始当初、褥瘡についての知識も浅くPTとしてどのように関わりを持つことが出来るのか手探り状態であった。地域の勉強会へ参加をする中で、褥瘡治療には医師・看護師が行う直接的治療と、コ・メディカルが関わる間接的治療があり、PTは関節可動域の拡大による体圧の分散や適切なポジショニング、ADL能力の向上などにおいて褥瘡治療・予防に関わることが出来るとわかった。そこで、看護師には体位交換の介助方法や、ポジショニングの指導(座位・臥位)、患者にはADL訓練や福祉用具の選択などを行い、PTとしての専門的な知識を活かし関わる事が出来てきたように思われる。<BR>【まとめ】PTが委員会の活動を始めてから、約3年が経過したが、まだ委員以外のスタッフの褥瘡に対する意識が低く、活動内容も十分に浸透していないように思われる。今後は、定期的に勉強会を実施し、また回診の参加を促すなどリハビリ内での啓発活動にも取り組みたい。委員会でのPTとしての活動課題は、現在の回診内容にとどまらず、栄養面・活動面からみて褥瘡発生リスクのある患者の予防についても検討を行い、深く関わりを持っていきたい。<BR>
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公益社団法人 日本理学療法士協会 | 論文
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