変性膝関節症患者の関節動揺性が外側楔状足底板の効果に影響を与えるか?
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概要
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【背景と目的】内側型変形性膝関節症患者(MOA)に対する外側楔状足底板(LWI)の効果に関する報告は散見するがその効果と関節動揺性との関係を示した研究は見当たらない。仮にLWIが膝関節の外反を促すものであるとしたならば、骨棘の増殖や靭帯の緊張による関節動揺性の過度の低下はLWIの効果を低下させる可能性がある。本研究の目的は、MOA患者のLWIの効果と関節動揺性との関係を歩行解析と関節動揺性解析により明らかにすることである。<BR>【対象と方法】内側コンパートメントにOA罹患のある患者20名40膝(年齢65.5±8.5歳, 男6名・女14名)を対象とした。Kellgren-Lawrence (K/L) Gradeの1が10膝、2が10膝、3が17膝、4が3膝であり、大腿脛骨角度は180.5±4.6度であった。中村ブレース社製LWI(10mm厚)の装着前および装着後の歩行分析は、アニマ社製動作解析装置と大型床反力計により実施し、膝関節の立脚初期時の外側方向への加速度ピーク(FAP)値および立脚期の膝関節内転(外部)モーメントピーク(PAM)値を3歩行周期の平均値として算出した。関節動揺性解析はGenucom Knee Analysisシステムを用いて膝関節屈曲90度で61N加圧時の脛骨の前後方向総動揺量、20度で8Nm加圧時の内外反総動揺角度を計測した。<BR>【結果】FAP値はLWI装着前1.71±0.65m/s<SUP>2</SUP>で装着後は1.45±0.45m/s<SUP>2</SUP>と有意な減少を認め、改善率は6.9±32.5%であった。同様にPAM値は、装着前8.93±2.24Nm/kgで装着後は8.73±2.27Nm/kgと有意ではないものの減少傾向を認め、改善率は2.1±5.9%であった。K/Lグレードと前後方向総動揺量には負の相関(R=-0.37)が、内外反総動揺角度には正の相関傾向(R=0.26)を認めた。内外反総動揺角度とFAP値およびPAM値の改善率にそれぞれ正の相関傾向(R=0.18、R=0.24)を認めた。前後方向総動揺量とは関係を認めなかった。<BR>【考察】MOAに対するLWIの効果として,前額面のアラインメントを変えるわけではないとされているものの、装着により大腿脛骨角度が改善したという報告や外側スラストの程度を示すとされるPAF値、および内側コンパートメントへの荷重不均衡を示すとされるPMA値が改善したとする報告がある。今回、内外反動揺性の程度とFAP値およびPAM値の改善率にそれぞれ正の相関傾向を示したことは、LWIの効果のメカニズムには内外反方向の可動性の存在が関与することが示唆される。さらに内外反可動性が維持あるいは増大したMOA例ではLWIの効果が期待できるのに対し、骨棘の増殖や靭帯の緊張等の理由により内外反可動性の低下した症例ではその効果が得られにくいものと考えられた。<BR>
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公益社団法人 日本理学療法士協会 | 論文
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