ジャンプ着地時の膝関節の運動学的解析:ACL損傷予防のために開発された膝サポーターの効果の検討
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概要
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【目的】非接触型の膝前十字靭帯(ACL)損傷は、ジャンプ着地動作、ストップ動作、カッティング動作などのスポーツ動作時に多く発生している。近年のビデオ解析により、動作時の脛骨の過剰な回旋や脛骨の前方移動がACL損傷を助長する可能性があると考えられている。我々は動的に脛骨の移動量および大腿骨、脛骨の回旋角度を測定可能な膝関節動作解析装置(以下、装置)を製作し、3次元での運動解析を行っている(2005)。本研究は、装置を用いてACL損傷好発肢位を抑制するために開発された膝サポーターの効果を運動学的に解析することを目的とした。<BR>【方法】対象は下肢に特別な既往のない女性10名とした。対象は課題動作として、30cm台から両脚での着地動作を行った。装置を用いて着地動作中の大腿骨および脛骨の回旋角度を測定した。角度表記は外旋をプラス、内旋をマイナスとした。本研究で用いた膝サポーターは、ACL損傷の受傷好発肢位を抑制するために開発されたものであり、テーピング効果をより得られるように工夫された構造を有している。測定は、膝サポーター非装着時、比較のための既存膝サポーター装着時、開発された膝サポーター装着時にそれぞれ行い、膝サポーター装着により大腿骨および脛骨の回旋角度に差がみられるか検討した。<BR>【結果】足尖接地時における大腿骨および脛骨回旋角度(平均値±標準偏差)は、それぞれ膝サポーター非装着時に33.6±14.9度、-27.0±15.8度、既存膝サポーター装着時に21.7±11.7度、-21.3±12.1度、開発された膝サポーター装着時に5.8±2.3度、-4.3±0.4度であった。大腿骨に対する脛骨の回旋角度は膝サポーター非装着時に-62.4±37.3度、既存膝サポーター装着時に-43.1±23.4度、開発された膝サポーター装着時に-10.1±2.7度であった。いずれも膝サポーター非装着時、既存膝サポーター、開発された膝サポーターの順に絶対値は小さな値となった。<BR>【考察】本研究では、膝サポーター装着によりジャンプ着地時の大腿骨および脛骨の回旋角度が変化するかを確かめた。膝サポーター装着により大腿骨および脛骨の回旋角度の絶対値は減少する傾向がみられ、開発された膝サポーターのほうが、既存のサポーターよりも回旋角度の抑制が強かった。また、足尖接地時には、いずれも脛骨は大腿骨に対して相対的に内旋していたが、開発されたサポーター装着時に最も小さな値であった。ACLは走行上、下腿が内旋した際に伸張される。開発された膝サポーターの装着により、着地初期の内旋角度は非装着時と比較して、およそ1/6まで減少していた。以上のことより、開発された膝サポーターは着地時のACLに加わるストレスを減少させ、ACL損傷を予防することができる可能性が示唆された。<BR><BR>
- 公益社団法人 日本理学療法士協会の論文
公益社団法人 日本理学療法士協会 | 論文
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