腰部疾患における短期術後成績(第2報):腰部脊柱管狭窄症における手術別による検討
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概要
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【はじめに】我々は第40回日本理学療法学術大会において腰椎疾患患者の術前と術後短期経過を比較し、日本整形外科学会腰痛疾患治療成績判定基準(以下JOA score)と腰部下肢痛の改善、歩行速度の上昇、SLRの改善、下肢抗重力筋力が増強した結果、患者満足度も上昇したが、体幹筋力の減少、股関節屈曲における柔軟性の低下と術後短期経過ではデメリットもあると知見を得た.手術方法は大きく分けて除圧術と固定術の2種類あり、術後後療法が大きく異なる.そこで今回我々は腰部脊柱管狭窄症を対象に術後短期における手術方法別による腰部機能評価、患者満足度、理学所見の検討を行い、若干の知見を得たので報告する.<BR>【対象】2002年5月〜2004年12月まで当院にて腰部脊柱管狭窄症(腰椎辷り症を含む)と診断され手術を施行した254例中、術前から術後6ヶ月まで当院での検診が可能であった116例(除圧術51例、固定術65例)を対象とした.性別は男性65名、女性51名、平均年齢65.8歳(23〜83歳)であった.手術方法別による年齢に有意差は認められなかった.<BR>【方法】術後リハビリはベッドサイドより開始し、立位歩行、ADL指導、下肢ストレッチ、姿勢矯正、体幹筋強化の順に実施し、固定術が除圧術より若干遅れて開始する.術後リハビリは固定術、除圧術共に歩容、下肢柔軟性改善、セルフストレッチ学習に重点を置き実施した.評価測定は術前と術後6ヶ月検診時に行った.検討項目はJOA score、疼痛評価としてVisual Analog Scale (以下VAS)、運動機能評価として両側股関節屈曲、SLR、膝伸展位での足関節背屈における下肢柔軟性、下肢体幹筋力(以下MMT)、10m最大歩行所要時間(以下10m歩行)を測定し、患者満足度としてMOS SF-36 Item Health Survey(以下SF-36)を実施し、手術方法別により術前後の変化を比較検討した.統計処理にはJOA score、VAS、下肢柔軟性、MMT、SF-36に対しMann-WhitneyのU検定を用い、ただしMMTは各クラスを点数として検討した.10m歩行に対し対応のないt-検定を用い、危険率1%未満を有意差ありとした.<BR>【結果】筋力において術前後の差は腹筋では除圧術が固定術より有意に改善した(p=.0067).SF-36において術前後の差には有意差は認められなかった.またJOA score、VAS、下肢柔軟性、10m歩行にも有意差は認められなかった.<BR>【考察】腰部脊柱管狭窄症における術後6ヶ月経過において後療法、ADL制限等により、体幹屈曲筋力が除圧術では改善傾向だが、固定術では低下傾向であった.手術方法の違いにより疼痛、柔軟性、歩行の改善には差がなく、患者満足度においても術前から比較すれば術後6ヶ月時点では変わらないと思われた.また手術方法に相違があっても腹筋に差を生じないことが今後の課題とされる.<BR>
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公益社団法人 日本理学療法士協会 | 論文
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