頸部郭清術後の上肢機能
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概要
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【はじめに】<BR> 頸部郭清術において副神経が切断されると術後に肩の運動障害を訴える患者が多いと報告されているが、逆に副神経を切断しても運動障害を訴えない症例や副神経を温存しても障害がみられることも報告されている。今回、頸部郭清術後の術側を健側の上肢機能を比較し、副神経切除例と副神経温存例にて障害の程度を検討した。<BR>【方法】<BR> 対象は、頭頸部腫瘍に対し頸部郭清術を施行した8例(うち副神経切除肢4例を含む)とした.性別は男性7例、女性1例、平均年齢51.3±17.7歳、手術側は右6例、左2例、術後半月~2ヶ月(平均1.25±0.6ヶ月)であった。<BR>評価項目は、1)肩関節屈曲筋力、外転筋力、2)肩関節可動域(自動・他動)、3)ADL評価を行なった。1)肩の筋力測定には、等速度運動装置CybexII+(Lumex社)を用い、肩関節屈曲筋力と外転筋力を測定した。回転速度は、60°/秒とし、内外旋中間位で測定した。筋力測定は、5回計測し平均を求めた。2)肩関節可動域は角度計を用い、同一検者が測定した。3)上肢のADL評価として、肩関節疾患治療成績判定基準の日常生活動作群項目(JOA score)を使用した。<BR>【結果】<BR>1)肩関節屈曲・外転筋力<BR> 健側肩関節屈曲筋力ピークトルクは2.4±0.6kg・m、術側肩関節屈曲筋力ピークトルクは1.85±0.87kg・mであった。健側肩関節外転筋力ピークトルクは1.7±0.2kg・m、術側外転筋力ピークトルクは1.2±0.9kg・mであった。副神経切除例の術側は、屈曲筋力ピークトルクは健側の90%、外転ピークトルクは健側の86%、副神経温存例の術側は、屈曲筋力ピークトルクは健側の54%、外転ピークトルクは健側の51%であった。<BR>2)肩関節可動域<BR> 肩関節屈曲可動域は健側他動屈曲166.8±7.0°、健側自動屈曲166.8±7.0°、術側他動屈曲165.6±9.0°、術側自動屈曲142.5±18.1°であった。外転可動域は、健側他動外転170.6±8.6°、健側自動外転170±8.6°、術側他動外転164.3±37.5°、術側自動外転105.1±37.5°であった。副神経切除例の術側は、自動屈曲が健側の88%、自動外転が67%、副神経温存例の術側は、自動屈曲が健側の82%、自動外転が健側の56%であった。<BR>3)ADL評価<BR> 日常生活動作群項目(JOA score)は、平均点数8.1±1.0(10点満点)であり、「患側を下に寝る」「上着を着る」「結髪動作」の項目で多くの症例の減点がみられた。副神経切除例の平均点数は8.8点、副神経温存例では7.3点であった。<BR>【考察】<BR> 今回の頸部郭清術後半月~2ヶ月の症例では、副神経の有無に関わらず肩関節筋力・可動域は健側に比べ患側の低下がみられた。機能障害やADL能力低下の程度は副神経の切除・温存以外の因子も影響すると考えられた。
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公益社団法人 日本理学療法士協会 | 論文
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