プロバスケットチームに対する当院メディカルチェックの現状:ビデオ分析の導入
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概要
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【はじめに】<BR> 当院ではプロバスケットチームに対しメディカルチェックを実施してきた.しかし従来の評価内容では機能面の評価が多く,動作との関連性に乏しいことが課題であった.そこで今回ビデオ分析を導入して姿勢・動作評価と機能面との関連を考察した.さらにメディカルチェックにおけるビデオ分析の必要性を検討した.<BR><BR>【メディカルチェックの内容】<BR> 1)下肢を中心とした関節可動域評価 2)足部の柔軟性 3)足部のアライメント評価 4)筋触察検査 5)姿勢,動作評価(2台のビデオカメラを使用し立位姿勢,前屈・後屈・側屈・回旋動作,片脚立位,歩行を前後・左右から撮影した.) 以上の評価方法をもとに姿勢,動作と関節可動域・筋緊張・足部アライメントとの関連性を考察した.以下に一症例を提示する.<BR><BR>【症例提示】<BR> 両膝痛,腰痛の訴えがあり,来院時に物理療法,徒手療法にて痛みの軽減ないし消失が可能である.しかし痛みの再発を繰り返している.メディカルチェックの結果:両SLR制限.両踵骨回内,左内側アーチの低下,両足関節中間位での背屈制限.ハムストリングス遠位部と腓腹筋近位部へのスパズム.姿勢,動作からは骨盤前方偏位及び後傾位,腰椎前弯消失,胸椎後弯増大,上半身重心後方化が認められた.また,腰椎部の不安定性,胸椎部の可動制限がみられた.上半身重心後方化より股関節屈曲および膝関節伸展モーメントの増大が予想され,膝前面痛の発生要因と考えられた.骨盤後傾と上半身重心の後方化はSLR制限と胸椎の後弯増大,腰椎の不安定性が主要因と考えた.その他にハムストリングスの遠位部と腓腹筋の近位部の過活動などが予想され,膝関節への痛みの要因と考えた.以上の考察を簡潔にまとめ,姿勢・動作の写真を添付して選手へ報告した.<BR><BR>【まとめ】<BR> 今回メディカルチェックにおいて従来の機能的評価に加えてビデオ分析による姿勢・動作評価を実施した.以下にその意義を示す.1)個々の機能面と姿勢・動作との関連性を分析できる.2)治療やコンディショニングの方向性を明確化できる.3)写真を添付しフィードバックを行うことで選手への意識付けを強めることができる.4)その意識付けにより痛みや怪我の予防につながる.今後の課題としては1)定期的な来院を要請し治療・コンディショニングを実施し,選手の身体状態の変化をチェックしていく.2)さらに姿勢・動作パターンへの助言や自主的なエクササイズ方法等の指導を行っていく.3)トレーナーにも同様な内容を報告し現場でのトレーニングの参考になるよう働きかける.4)実際の試合会場にもコンディショニングに出向き選手の身体状態を確認,さらに試合での選手の動きをビデオ撮影し特徴を分析,今後の治療・コンディショニングの方向性を明確にしていくこと.等を検討している.<BR>
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公益社団法人 日本理学療法士協会 | 論文
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