成長期若年野球競技者における身体的特性について
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概要
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【目的】<BR>当院は外来専門のクリニックであり、障害初期の学生患者も多く来院する。特に野球競技者が多く、投球側上肢の障害をきたした若年患者が多い。これらの患者は障害部位以外においても局所的な筋力低下や、関節可動域制限などをきたしていることが感ぜられた。そこで今回、成長過程にある野球競技者を対象にし、比較的非対称的な動作の多い野球動作の身体への影響の程度を比較、検討した。<BR>【方法】<BR>野球が原因で当院に来院している患者7名(全て男性 平均年齢15.86±1.57 (13~18才)平均野球歴5年 全て右投げ右打ち)と任意の7名(全て男性 平均年齢16.71±1.8(13~18才)、計14名抽出した。両群において、1脊柱(胸腰椎)の弯曲 2頚部回旋可動域 3頚部側屈可動域 4体幹回旋可動域 5体幹側屈可動域 6第4胸椎棘突起―肩甲骨内縁距離の左右誤差を求め、統計学的処理を加えた。脊柱弯曲の測定は重錘をつけた糸をL5棘突起上に垂らし、T1棘突起との距離を測定した。<BR>【結果】<BR>脊柱弯曲は有意差が認められた(P<0.01)。頚部においては有意な差は認められなかったが、体幹においては有意差が認められた(P<0.01)。肩甲骨の位置変化においては高い水準で有意な差が認められた(P<0.001)。<BR>【考察】<BR>野球競技においては、体幹の一方向への回旋動作が繰り返される。一日に数百回であることも珍しくない。今回は右投げ右打ちの選手を対象としたので、左回旋動作の繰り返しということになる。その影響を受けているため、脊柱弯曲は右側への偏りが多く見られた。カパンジーによれば、脊柱は回旋した際に逆方向への側屈を伴う。左回旋を繰り返すことにより、右側屈変位が自動的に誘発されるものと述べられている。体幹の左回旋可動域にも制限が認められた。脊柱の右側屈が増してくると、脊柱左側靭帯組織の緊張が増し、左回旋可動域制限の原因となってくることが考えられた。投球側肩甲骨は外転変位する傾向が大きく認められた。これは肩関節周囲筋の筋バランスの変化によるものが大きいことが考えられた。<BR>【結論】成長期は筋組織が張力を増しやすい時期であり、この時期に偏った運動をすることでさらに筋の張力にアンバランスを起こしやすい。中学から高校にかけては練習の質も量も増加してくる時期であるのでそれに耐えうる体力をつける前にバランスのよい体を作っておくことは大切になってくる。アライメントの悪い状態でのトレーニングは変位を助長し、筋出力障害を起こし、さまざまな2次的障害の原因となる
- 公益社団法人 日本理学療法士協会の論文
公益社団法人 日本理学療法士協会 | 論文
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