高齢者の端坐位運動及び立ち上がり動作における体幹機能の特徴
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概要
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【目的】本研究の目的は、健常若年者(以下、若年者)との比較を通して、陳旧性の疾患を持つ高齢者(以下、高齢者)の端坐位運動及び立ち上がり動作における体幹機能の特徴を明らかにすることである。<BR>【対象】研究内容を充分に説明し、同意を得た若年者6名(平均24歳)と障害老人日常生活自立度A2以上の高齢者10名(平均77歳)を被験者とした。<BR>【方法】<BR>1.測定手順 被験者の肩峰、大転子、大腿骨外側上顆、胸骨切痕、臍に マーカー装着後、壁に貼り付けた5cm刻みの方眼用紙の前で、座面の高さを験者の脛骨上縁に合わせた背もたれなしの椅子に、被験者の膝窩と椅子座面前縁の間に2横指分の隙間ができるように端坐位をとらせた。次に、端坐位姿勢での各種運動及び立ち上がり動作を行なわせ、矢状面、前額面からデジタルビデオカメラで撮影した。この映像を元に、以下に示す3つの分析項目を測定した。<BR>2.分析項目<BR><1>端坐位での各種運動時の体幹傾斜角度<BR> 両上肢挙上動作時は、方眼の垂線と肩峰-大転子を結ぶ線とのなす角度、脚を組む動作時は大腿骨長軸と仙角後面とのなす角度、側方リーチ動作時は、方眼垂線と胸骨切痕-臍を結ぶ線とのなす角度を、それぞれ体幹傾斜角度とした。<BR><2>体幹水平移動距離<BR> 立ち上がり動作、前方リーチ動作において、頭頂部と臍の位置を方眼用紙からメモリを読み、その差と座高との割合で算出した。尚、立ち上がり動作は離床期(大転子が上方へ移動し始めたとき)と立ち上がり期(頭部が最も前方へ移動したとき)の2相に分けた。<BR><3>脊椎可動性<BR> 壁を背にした端坐位をとらせ、体幹回旋運動前後の肩峰と壁との距離を測定し、その差を可動性の差とした。<BR><統計処理><BR>若年者と高齢者の各測定値の平均を比較した。各項目の処理には、t検定(Excel Microsoft社製)を用い、有意水準を5%とした。<BR>【結果】端坐位での体幹後傾の平均値において、高齢者は若年者に比べ、有意に大きかった。また、体幹側方傾斜、坐位前方リーチ、立ち上がり動作の離床期及び立ち上がり期の頭部移動距離、体幹回旋運動範囲の各平均値に関しては、高齢者は若年者に比べ、有意に小さかった。<BR>【考察】高齢者は、端坐位動作姿勢において、若年者と比較して骨盤後傾傾向にあり、脊椎可動性低下により胸椎の抗重力的な活動が困難であり、さらには腰椎前弯も制限されていると考えられる。そして、そういったことが、高齢者の坐位前方リーチ動作、立ち上がり動作の頭部水平移動距離が若年者に比べ有意に小さいことの大きな理由にもなっていると考えられる。高齢者の坐位運動及び立ち上がり動作の特徴は、胸腰椎の可動性低下や骨盤後傾位による骨盤前傾運動の不充分といった理由で、より安全性を重視したパターンであることが推測される。<BR><BR>
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公益社団法人 日本理学療法士協会 | 論文
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