外来水中運動療法開始時アンケートに見る保護者のニードと理学療法士の役割
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概要
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【目的】発達障害児に対する水中運動療法への保護者のニードを分析し、理学療法士の役割を検討する。<BR><BR>【方法】当センターでは、保護者への指導、援助を目的にした外来水中運動療法グループ指導を実施している。1年ごとに保護者への説明会を実施しており、この際、保護者のニードと前年度までの指導に対する評価を知るために、アンケートを実施している。このアンケートを、指導継続年数別、対象児の障害の重症度別に分析することで、保護者のニードの違いと変化を明らかにする。さらに、水中運動療法に関わる理学療法士の役割を検討する。<BR><BR>【結果】2002年度から2005年度までの4年間のアンケートのうち、はじめて当センターで水中運動療法を受けた39名のアンケートを分析した。診断名の内訳は、脳性まひ21名、脳症、脳炎後遺症4名、知的障害7名、染色体異常など7名であった。障害の重症度を移動能力によって分類すると、独歩または歩行器歩行可能(以下歩行群)9名、四つ這い移動可能3名、寝返りあるいは肘這い可能13名、姿勢変換も移動も不可が14名であった。プール指導に期待することは、歩行群においては、「泳ぎの獲得」と「楽しみの広がり」が最も多く5であった。寝返り、肘這い群では、「動きの活発化」が5と最も多く、ついで「楽しみの広がり」が4であった。移動、姿勢変換不可群では、「リラックスして欲しい」が最も多く7。次いで、「動きの活発化」が4、「楽しみの広がり」が4であった。初年度に引き続き2年目の開始時アンケートが回収できた14名について分析すると、初年度のニードは「リラックスして欲しい」が6名、「楽しみの広がり」が5名、「手足の動き、動きの活発化」が4名であったのに対し、2年目は「手足を動かす、動きの活発化」が7名となり、「リラックスして欲しい」は1名に減っていた。<BR><BR>【考察】初年度の保護者のニードとして障害の重症度にかかわらず多いのは「楽しみの広がり」であり、水中運動療法がQOL向上のための手段としてとらえられていることがわかる。重症度別に見ると、重度であるほど水中でリラックスして欲しいとのニードが高い。が、2年目になると重症児であっても、「リラックス」「楽しみ」が減り、「動きの活発化」が増えている。初年度の指導の中で、水中でリラックスし楽しむことはほぼ達成され、さらに上位の目標として水中で自発運動が活発化することが望まれていると考えられる。これに応えるためには、理学療法士による水中での姿勢運動分析とハンドリング指導が必要であることが示唆される。<BR><BR>【まとめ】水中運動療法に対する保護者のニードを分析した。継続年数が2年目を超えると水中での自発運動の活発化を求める声が多く、これに応えるためには、理学療法士のかかわりが必要であると考えた。
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公益社団法人 日本理学療法士協会 | 論文
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