脳卒中片麻痺患者の主観的障害度と身体機能との関連性
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概要
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【目的】慢性期脳卒中片麻痺患者の障害観をについての理解を深めるために、客観的機能障害と聞き取り調査による患者の主観的障害度、日常生活の満足度およびその判断理由を調査し、主観的障害度と機能障害の関連性、および主観的障害度を構成する要素を検討することを目的とした。<BR>【方法】対象は発症後6ヶ月以上を経過し外来通院中の初発の脳卒中片麻痺患者29名とした。主観的障害度は病前の身体機能を100%としたとき、評価時点における身体機能がその何%に相当するかを上肢、下肢、全身に分け、5%単位で回答することを求めた。日常生活の満足度は、「不満である」から「満足している」の5段階で回答を求めた。また、両者について判断理由を聴取した。調査に先立ち口頭で研究の主旨を説明し同意を得た。上下肢の運動機能は、Brunnstrom stage(以下BS)とSIASの上肢2項目、下肢3項目の評点合計を用いて評価した。歩行能力は「立位・歩行不能」から「1km以上屋外歩行自立」の10段階に分け評価した。ADL評価にはBarthel index(以下BI)を用いた。主観的障害度と機能障害との関連性は、Spearmanの順位相関係数を用いて検討した。主観的障害度の要素は、主観的障害度(%)を判断した理由(複数回答)を列挙し、内容的に等しい小項目に分類した後、全体の回答数に占める小項目に含まれる回答数の割合を求め検討した。<BR>【結果】上肢および下肢の主観的障害度の平均値29.7±24.9%、42.9±22.5%に対し、BSの中央値は上肢:IV、下肢:IV、SIAS平均点は上肢:5.3±3.1、下肢:8.6±3.9であり、客観的評価指標による評定より主観的評価の値が低い傾向を認めた。ADL能力でもBI上では満点の100点であっても、身体全体の主観的障害度が30~50%である対象者が10人中5人を占めた。Spearmanの相関係数の比較では、上下肢の主観的障害度はBSよりSIASの方に関連が強かった。上肢の主観的障害度は上肢の運動麻痺・機能障害程度、下肢の主観的障害度は移動能力、下肢の運動麻痺・機能障害の程度全身の主観的障害度は、上下肢の運動麻痺・機能障害の程度、移動能力、ADL能力により判断されていた。日常生活の満足度は、ADL、移動能力、APDLによる判断が多くなされていた。<BR>【考察】BSとSIASの評価結果を比較すると、SIASの運動機能評価の方が片麻痺患者の主観的な障害度と強く関連したため、片麻痺患者や家族に運動機能の説明をするときはSIASの結果を用いる方が患者・家族にとっては理解しやすいと思う。主観的障害度の構成要素は、上肢、下肢、身体全体と視点が異なるに従い、個別の身体部位の麻痺や機能障害度の程度を基本に、上肢に関してはADL能力、下肢に関しては移動能力が判断要素として大きな割合を占め、日常生活の満足度ではAPDLなど、より広い生活活動が加わっている。これらの知見は、患者・家族へ障害の説明をするときに役に立つと思われる。<BR><BR>
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公益社団法人 日本理学療法士協会 | 論文
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