脳血管障害者の安全性にかかわる自己管理能力の経時変化
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概要
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【目的】安全性の視点から作成した自己管理能力評価表を用いて、脳血管障害者(以下CVD)の自己管理能力の経時変化を明らかにすることを目的とした。<BR>【対象と方法】対象は、研究の同意が得られたH病院でリハビリテーションを行っている入院および外来通院中のCVD20人(平均年齢70.5±2歳、発症からの期間832.4±266日)であった。取り込み基準は移乗動作が軽介助レベル以上の者とし、除外基準は4段階の選択肢から回答できない高度の知的機能障害とした。本研究で用いた自作の自己管理能力の評価表は、移乗・歩行の「動作確認」と「自信」についての各10項目を、対象者と理学療法士が同じ項目を評価するもので、両者の得点および差(以下、乖離)を評価指標とした。なお、本評価表の信頼性と妥当性は既に報告している。その他、Mini Mental State Examination(MMSE)・Stroke Impairment Assessment Set(SIAS)・Functional Reach(FR)・Functional Independence Measure(FIM)・自立活動範囲(1段階:ベッド上生活から8段階:交通機関利用して外出に設定)を調査した。解析は、Wilcoxonの符号順位和検定およびMann-WhitneyのU検定をSPSSversion11.5Jを用いて行った。<BR>【結果・考察】入院中では1ヶ月後、外来通院中の対象者では3ヵ月後に、SIAS(初回/二回目:47.5点/50.5点)とFR(18.2cm/22.6cm)で1%水準、FIM運動項目(69.9点/72.7点)と自立活動範囲(4.4レベル/4.9レベル)で5%水準の有意な改善が認められた。自己管理能力は、全対象者の得点が増加し、乖離の絶対値は小さくなる傾向にあった。自己管理能力の得点の増加と乖離の縮小は日常生活での自立度の向上に影響していることが示された。「自信」について、入院中の対象者群は、初回の評価の平均点が対象者23.7点、理学療法士22.4点、乖離が+5.7となり自己管理能力を過大評価して乖離が大きいが、介入によって二回目の評価の平均点は、対象者27.1点、理学療法士28.2点、乖離が+3.1と得点の有意な増加と乖離の減少が認められた。他方、外来通院中の対象者群では、初回の評価の平均点が対象者30.6点、理学療法士38.7点、乖離が-8.1となり、二回目の評価の平均点は対象者31.2点、理学療法士39.1点、乖離が-7.9となり、自己管理能力を過小評価しているため乖離が大きくなっていた。以上より、CVDの安全性の視点から捉えた自己管理能力評価表は、入院群と在宅群の違いを明らかにし、生活機能に注目した目標志向型の介入を検討する上で有用であることが示唆された。<BR>
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公益社団法人 日本理学療法士協会 | 論文
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