脳梗塞後の神経再生:NestinとPGP 9.5の発現
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概要
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【目的】幹細胞の発見によって分子細胞生物学分野の急速な発展があり,細胞を特定する様々なマーカーの発見や開発が行われている。Nestinとは神経幹細胞にあるタイプVI中間径フィラメント蛋白であり,神経幹細胞のマーカーとして知られている。また,Mokry et al.(2004)は心筋梗塞後の血管新生時に細胞骨格として発現し,新生血管構築のマーカーになると報告している。PGP 9.5とはprotein gene product 9.5の略であり,神経細胞の分化のマーカーとして知られている。今回はヒトの脳梗塞後の脳内におけるNestinとPGP 9.5の発現を指標として修復と再生について調べた。<BR><BR>【方法】脳梗塞後死亡した6症例および明らかな脳障害を呈さずに死亡した2症例を対象とした。標本作成手順は通常通りにホルマリン固定,パラフィン包埋後薄切した。ヘマトキシリン・エオジン染色とNestinおよびPGP 9.5の免疫組織化学染色を行い,光学顕微鏡にて観察した。<BR><BR>【結果】正常成人脳では,PGP 9.5は,大脳皮質の神経細胞およびその間のニューロピルが軽度陽性で,大脳白質の突起も部分的に陽性であった。Nestinは陰性であった。新しい脳梗塞周辺では,Nestinがグリア細胞に陽性に発現し,ごく一部の神経細胞にも陽性であった。PGP 9.5は新しい梗塞では低下し,その周辺で増強している神経細胞があった。古い病巣部の周辺にはPGP 9.5が陽性の大きな神経細胞があった。<BR><BR>【考察】脳梗塞後の脳にNestinやPGP 9.5の発現が一過性に増強する細胞があることがわかった。古い病巣周辺の大きな神経細胞は病巣の細胞の壊死による代償性肥大の可能性がある。発現時期の特定や発現する機能特性は明らかではなく,今後の課題である。<BR><BR>
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公益社団法人 日本理学療法士協会 | 論文
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