片麻痺患者における歩数計装着部位が測定値に及ぼす影響について
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概要
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【はじめに】歩数計は、身体の上下方向に加わる振動により歩数をカウントするものであり、ウオーキングによる生活習慣病の予防、改善の観点から使用される場合が多い。しかし、独歩可能な脳卒中片麻痺患者においても、1日の活動量の指標として歩数計を使用することは有用と考えられる。その場合、歩数計による振動の感知は、脳卒中片麻痺の身体的特性上、健常人と異なることや装着部位により変動することが予想される。本研究の目的は、独歩可能な片麻痺患者における歩数計装着部位が測定値に及ぼす影響について検討することである。<BR>【対象および方法】対象者は、本研究の目的を理解し、同意を得た当院入院患者、男性20名(平均年齢51.1歳、身長165.5±6.1cm、体重67.4±12.5kg)とした。診断名は、脳梗塞9名、脳出血9名、脳外傷2名、障害名が右片麻痺10名、左片麻痺10名であった。下肢のBrunnstrom Stageは、III3名、IV6名、V6名、VI5名であり、福祉用具の使用状況が、T字杖使用者8名、AFO装着者5名であった。測定項目は、100歩歩行した際の歩数計のカウント数、10m歩行所要時間とその歩数とした。歩数計は社団法人日本ウオ―キング協会公認である山佐加算電子万歩計WM-400 WORLD MARCHを用いた。万歩計の装着部位は、麻痺側上前腸骨棘、非麻痺側上前腸骨棘、麻痺側装具、装具を装着していない者であれば麻痺側靴下の合計3ヶ所とした。測定条件は、歩行が院内にて自立している者として、右足から始まる100歩、100歩目を揃え形にして静止した際の歩数計のカウントを数えた。<BR>【結果】歩数100歩における歩数計のカウント数は、麻痺側上前腸骨棘が91.3±12.7歩、非麻痺側上前腸骨棘87.4±14.3歩、麻痺側装具および麻痺側靴下121.1±22.7歩であった。10m歩行所要時間は、13.0±4.7秒であり、歩数が20±5.0であり、10m歩行所要時間から算出された歩行速度が53.4±21.5m/minであった。<BR>【考察】今回は、麻痺側装具および麻痺側靴下が過大に、麻痺側、非麻痺側の上前腸骨棘が過小に評価される結果となった。歩数計については、歩行速度が60m/min以上でほぼ正確に、約40m/minで過小にカウントするといわれている。本結果の歩行速度は、バラツキが大きく、歩行速度の低下しているものについて過小にカウントしていることが考えられた。また、過大評価された麻痺側装具および麻痺側靴下については、装着部位が床面に近いため踵接地時の衝撃が大きくダブルカウントされていることが考えられた。このことから片麻痺患者に歩数計を使用する場合は、装着部位の影響と歩行速度の影響を考慮する必要があり、個人毎により正確に反映される装着部位を探した上で用いることが有効と考えられた。<BR><BR>
- 公益社団法人 日本理学療法士協会の論文
公益社団法人 日本理学療法士協会 | 論文
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