超簡単バランステストの考案:つま先上げバランステストは有用?
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概要
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【はじめに】<BR>高齢者の転倒予防においてバランス能力を評価することは非常に重要であるが、現在有用といわれているバランステスト・バランススケールは、場所の設定やメジャー・ストップウォッチ等の測定機器が必要であったり、短時間で測定できないなど、どのような時でも簡便に使用できるとはいえない。今研究では、1)場所が非常に狭くてもできること 2)メージャーやストップウォッチ等の測定機器を必要としないこと 3)1分以内に測定ができること 4)誰にでも測定ができること、を条件に「つま先上げバランステスト」を考案し、このバランステストの信頼性や妥当性を検討した。<BR>【対象・方法】<BR>対象は、施設や病院の65歳以上の高齢者90名(平均年齢81.06±0.83歳、男性38名・女性52名)で、座位で両足関節の背屈が可能な方とした。つま先上げバランステストの方法は、肩幅立位での裸足にて両足のつま先上げ(両足のすべてのMP関節が同時に床から一瞬でも離れたかどうかを基準)が5回できるかどうかを測定した。また、つま先上げができてもその後にバランスを崩し足部が少しでもずれてしまった場合は不可とした(5回中に2回バランスを崩した場合は3回の成功回数とする)。つま先上げバランステストの結果と被験者のバランス能力を比較検討するため、Timed Up & Go test(以下TUG)とFunctional Reach test(以下FR)も測定した。統計学的処理には、スペアマン順位相関係数、T-test、Student-Newman-Keuls testを用い、有意水準は5%未満とした。<BR>【結果】<BR>つま先上げバランステストの成功回数とTUG・FRとの間には相関がみられた。成功回数別にTUG・FRそれぞれと比較した場合では、成功回数0回の群と成功回数1~5回の群との間には有意差がみられたが、その他では有意差はみられなかった。移動手段と成功回数を比較した場合では、独歩・杖歩行群、歩行器群、車椅子群での比較すべてにおいて有意差がみられた。転倒暦のある群とない群での成功回数の比較では、転倒暦のある群に比べ、ない群では成功回数が有意に少ない結果であった。<BR>【考察】<BR> つま先上げバランステストは、バランス能力との相関により、バランス能力を評価する1つの検査手段になる可能性があると考える。しかし、成功回数1~5回の差によりバランス能力を評価するのは困難である結果となり、このつま先上げバランステストは1回の成功可否が重要であると考える。今後は、今研究のような判定基準以外に、「第1MP関節は同時に上げることができる」または「片側の第5MP関節以外のすべてのMP関節は上げることができる」などの判定基準をつくることにより、より精度の高いつま先上げバランステストを開発できるのではないかと考えている。<BR>
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公益社団法人 日本理学療法士協会 | 論文
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