上肢挙上時の上部体幹の傾きについて:三次元動作解析装置と筋電図解析装置を用いた検討
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概要
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【目的】肩関節運動に関する三次元動作解析装置(3D-MA)と筋電図解析装置(EMG)を用いた研究の報告は少なく,左右差を比較した報告もみられない.我々は第4回AWP-ACPT学会で肩甲骨面上での上肢挙上時の肩関節の関節運動と筋活動の解析について発表した.今回は同じシステムを用いて,上肢挙上時の上部体幹の傾きについて解析を行った.<BR>【方法】対象は書面にて同意を得た肩に障害のない健常男性6名(24±4歳).測定は,三次元動作解析装置(キッセイコムテック社製,KinemaTracer)と8ch筋電図テレメータ(MARQ Medical社製,MQ8)を同期させて行った.記録した上肢挙上に関与する筋の筋電図は3D-MAの解析プログラムに取り込み,肩甲骨面上の上肢挙上時の外転角度と上部体幹の前額面上及び矢状面上の傾き角度を同時に観察した.3D-MAの体表マーカーは,(1)肩甲骨下角,(2)肩甲棘内縁,(3)肩峰後角, (4)烏口突起, (5)上腕骨肘頭, (6)Th2棘突起, (7) Th7棘突起に添付し,表面筋電図の電極は,電極間インピーダンスを5kΩに前処理したのち,(1)三角筋中部線維, (2)棘上筋,(3)棘下筋,(4)僧帽筋上部,(5)僧帽筋下部,(6)前鋸筋下部,(7)広背筋,(8)多裂筋に貼付した.<BR>【結果】肩甲骨面上での上肢挙上時の上部体幹の傾きは開始位置を0度としたとき, 平均値は前額面上の傾きでは挙上と反対側に_-0.5±0.8~7.4±1.7度, 矢状面上で後方に-2.2±2.0~5.5±2.2度変化した.また6名全員に左右差がみられた.前額面上の傾きは挙上と反対側に傾くが全例で最大挙上時にピークがある訳ではなかった.また,矢状面上の傾きは,挙上開始時に一度前方に傾いてから後方に傾く例もあり同一の傾向を示さなかった.これらの傾きの変化と筋電図との比較においては同一の傾向が認められなかった.<BR>【考察】上肢挙上時の体幹の動きについては,運動学において語られ臨床的にも重要性が指摘されているが報告は少ない.本研究の測定結果に限局すれば,1)上肢挙上時に体幹の傾きに左右差が存在すること,2)矢状面での傾きも開始時から後方に傾くだけではないこと,2)挙上角度に左右差がある場合,後方に傾く方が挙上角度が高い傾向にあることなどが明らかになった.本研究のシステムを使用することにより関節運動と筋活動のメカニズムを同時にかつ詳細に観察し解析することが可能であり,上肢及び体幹の運動学的解析のツールとして活用できる.<BR>今後は,さらに対象数を増やし,上肢及び上肢帯の運動メカニズムについて知見を増やしていきたい.<BR>
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公益社団法人 日本理学療法士協会 | 論文
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