成長期の野球選手における球速と体幹運動との関連
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概要
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【目的】投球動作は下肢,体幹,上肢へと効率よくエネルギーをボールへ伝達する全身運動である.これは投球能力の指標である球速に反映し,特に体幹運動は投球動作の習熟や球速に大きく関与するとされている.今回,3次元動作解析システムを用い少年野球選手の投球動作解析を行ない,成長期における球速差の要因や投球動作の特徴を検討したので報告する.<BR><BR>【方法】対象は少年硬式野球チームに所属する右投げ選手35名である.対象を球速の中央値(75km/h)で76km/h以上群(F群,平均83.3km/h)17名,球速75km/h以下群(S群,平均70.2km/h)18名の2群に分けた.投球動作解析は3次元動作解析システム(Vicon 612)とハイスピードカメラを用い,球速はスピードガンで測定した.投球動作を投球開始から非軸脚膝の最高到達時(HK),踏み込み脚接地時(FC),投球肩最大外旋時(MER),ボールリリース時(BR)の4フェーズとし,骨盤・体幹回旋角速度,骨盤・体幹回旋角,骨盤に対する体幹回旋角(捻れ角) ,肘及び手の移動速度について2群間で比較した.また年齢,身長,体重,経験年数も検討した.統計学的分析は対応のない2群間のt検定を用い,有意水準を5%以下とした.<BR><BR>【結果】F群はS群に比し,FCの体幹右回旋角(F:0.76°,S:-8.81°),右捻れ角(F:28.6°,S:22.9°),MERの体幹左回旋角(F:112.6°,S:94.1°),最大体幹左回旋角速度(F:1055.7°/s,S:976.7°/s),最大肘速度(F:36.7km/h,S:31. 5km/h),最大手速度(F:45.8km/h,S:40.6km/h)が有意に高値を示した.しかしMERの骨盤左回旋角速度(F:177.9°/s,S:290.4°/s), BRの体幹左回旋角速度(F:89.2°/s,S:269.2°/s)は有意に低値を示した.年齢(F:11.2歳,S:9.9歳),身長(F:148.8cm,S:137.2cm),体重(F:41.2kg,S:33.2kg),経験年数(F:3.1年,S:1.8年)は有意に高値を示した.<BR><BR>【考察】F群ではFCで体幹を右回旋することで非投球方向への回旋運動を高めるための予備動作を形成し,体幹の左回旋速度,肘及び手の移動速度を速めていることが推察された.さらにMERで骨盤左回旋速度,BRで体幹左回旋速度が低下しており,F群はMERから骨盤,体幹の順に減速動作を行なっていた.しかしS群ではMERで骨盤左回旋速度,BRで体幹左回旋速度を速め,ボールリリースまでに骨盤と体幹の減速動作が行なわれておらず,非効率的な投球動作と考えられた.以上のことから成長期における球速の違いは,年齢による身長,体重の発育と経験による投球動作の習熟度として骨盤,体幹,上肢への運動連鎖が関与していることが示唆された.
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公益社団法人 日本理学療法士協会 | 論文
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