頚部振動刺激中の運動イメージ付与による起立動作の変化
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概要
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【目的】<BR> 本研究の目的は頚部振動刺激による頭部の運動錯覚中に頚部屈曲あるいは伸展の運動イメージを介入することで,その後の起立動作がどのように変化するか三次元動作解析装置と床反力計を用いて調査することである.<BR>【方法】<BR> 健常男性18名を対象に実験を行った.対象者は9名ずつ2群とし,この2群で身長の平均がなるべく揃うよう分けた.各関節位置は,三次元動作解析システム(MA-2000:アニマ社製)を用いて計測し,サンプリング周波数60Hzで経時的に算出した.マーカーは身体左側の肩峰,大転子,大腿骨外側上顆,外果,第5中足骨頭とした.動作解析システムと同期して床反力形(アニマ社製)を用いた.床反力計上に椅子を設置し,被験者の足底を接地させ,左右方向(以下,X成分)と前後方向(以下,Y成分)の足圧中心点を計測した.<BR> 起立動作の肢位は閉足位,椅子の高さは股関節屈曲90°,膝関節屈曲100°になるよう調節した.両上肢は胸の前で組ませ,足部の位置を動かさないよう指示し,閉眼にて至適速度で起立させた.全被験者が1回の起立動作の計測終了後,以下の介入を行った.1)座位で1分間,振動刺激(VIBRATOR:泉精器製作所社製,周波数約91.7Hz)を第7頚椎棘突起直上に当て,頚部屈曲の運動錯覚が生じていることを確認し,それと同時に被験者に頚部屈曲の運動イメージを行わせた(V+群).2)1分間の頚部振動刺激中にV+群とは逆に頚部伸展の運動イメージを行わせた(V-群).介入後,両群とも2分毎に5施行起立動作の計測を行った.<BR> 導出パラメータは1)椅子から抜重時点での肩峰と大転子を結んだ線と大転子と外果を結んだ線の成す角(以下,股関節角度),2)椅子抜重後から起立動作完了後の2.5秒までにY成分が最大となった時点の前後0.5秒間のX成分,Y成分の平均値(以下,Xmax,Ymax),3)起立動作完了後の3秒後から1秒間のX成分,Y成分の平均値(以下,Xst,Yst)とした.統計処理は振動刺激介入前と介入後5施行の被験者ごとのパラメータの比較に対応のあるt検定を用い,有意水準は5%未満とした.<BR>【結果】<BR> 両群とも,介入前後での股関節角度,Xmax,Xstには変化が認められなかった.V+群は介入後1施行目でYmaxおよびYstが有意に増大した(p<0.05).また,起立動作の施行が進むにつれ,Ymaxは減少したが,5施行目であってもYstは介入前より増大していた(p<0.05).V-群は介入後1,2,3施行目で介入前よりYmaxは増大していた(p<0.05)が,4,5施行目では有意差を認めなかった.Ystには介入前後で有意差を認めなかった.<BR>【考察】<BR> V+群では運動錯覚の強い後効果が残存し,頚部振動刺激が姿勢の変位を生じさせる結果となった.一方,V-群は運動錯覚と逆方向の運動イメージにより,姿勢変位が相殺されていた.頚部振動刺激に運動イメージを併用することで,起立動作の姿勢変化を起こすことが可能であることが考えられた.
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公益社団法人 日本理学療法士協会 | 論文
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