ひずみゲージを用いた足把持力測定器の開発
スポンサーリンク
概要
- 論文の詳細を見る
【背景と目的】足趾・足底機能は、高齢者転倒との関連性からその重要性が報告され、なかでも足趾筋力に関する報告が散見されるようになった。我々も既製のデジタル握力計を用いて、足把持力測定器を考案し、その測定値に再現性と妥当性があることを2002年に報告した。しかしながら、我々が作成した測定器にはいくつかの問題点が指摘された。それは、筋力発揮が非常に小さな場合、デジタル測定が測定器の特性上困難であったこと、直径4 mmのステンレス製の足趾把持バーでは径が小さく、測定し難い被検者がいたことなどである。そこで今回、株式会社ヤガミの協力を得て、上記問題点を解決するとともに、足把持力の最大値到達時間についても計測できる測定器を作成したので報告する。<BR>【作成した測定器】測定にはヤガミ社製のひずみゲージを用いた。<BR>ひずみゲージとは金属のひずみ量、応力(単位面積あたりにかかる力)を測定するのに用いられるセンサーである。その利点は応答周波数が高く精密な値が抽出できること、出力が電気量のためデータ処理が容易であることなどがあげられる。本測定器は、ひずみゲージを木製の基礎板(65 cm×25 cm)に固定し(可動式継手により30度可動)、直径5 mmのステンレス製鋼線をひずみゲージの力点になる部分に取り付けて、足趾把持バーとした。また、足趾で把持したときの疼痛発生予防のために、足趾がかかる部分の鋼線を塩化ビニール樹脂でコーティングした。足部は下腿前面を木製バーで固定し、後面は膝や足関節の代償運動が生じないように、測定器から踵部を離さないこととした。なお、基礎板の踵部を乗せる部分にセンサーを取り付け、踵部が測定器から離れるとブザーが鳴るようにした。ひずみゲージからの信号は、増幅装置とアナログ/デジタル変換器を内蔵した専用ボックスに接続され、デジタルデータとしてパーソナルコンピュータに記録・保存されるようにした。なお、データはサンプリング周波数10 Hzと100 Hzに切り替えが可能であり、測定範囲は0~99.9 kg、最小単位は0.1 kgである。<BR>【考察】旧測定器の問題点であった足趾把持バーについては、バーを塩化ビニール樹脂でコーティングすることによって改善され、弱化した(5 kg未満)足把持力の測定については、ひずみゲージを使用することによって、最小0.1 kgからの計測が正確に行えるようになった。さらに、足把持力の最大値到達時間についても計測できることから、足把持力測定における測定時間の再考や、最大値到達時間を測定する臨床的意義についての検討が可能となった。学会当日には、本測定器から得られた実際の計測データを含めて報告する。
- 公益社団法人 日本理学療法士協会の論文
公益社団法人 日本理学療法士協会 | 論文
- 療養型病院における廃用症候群の予後予測
- 髄腔内バクロフェン治療(ITB)後の理学療法:―歩行可能な症例に対する評価とアプローチ―
- 理学療法士の職域拡大としてのマネジメントについて:―美容・健康業界参入への可能性―
- 脳血管障害患者の歩行速度と麻痺側立脚後期の関連性:短下肢装具足継手の有無に着目して
- 健常者と脳血管障害片麻痺者の共同運動の特徴:―異なる姿勢におけるprimary torqueとsecondary torqueの検討―