臨床実習中におけるインターネット掲示板の利用状況:活用度の経時的変化
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概要
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【はじめに】現在の若者はコンピュータ・メディア・コミュニケーションを用いての心的なつながりを持つことにより孤独感を回避しているとの報告がある。臨床実習中における掲示板活用の有用性については酒井らが報告している。我々は、臨床実習中の学生間連絡にインターネット掲示板の利用状況等を計4期の実習にて経時的に比較検討し、若干の知見を得たので報告する。<BR>【対象と方法】対象は、本校の平成14年度評価実習(3週間)1期49名(以下I)、2期44名(以下II)、平成15年度インターン実習(8週間)1期49名(以下III)、2期48名(以下IV)である。掲示板はパソコン、携帯電話から接続可能で、方式はスレッドフロー式を用いた。実習生には、プライバシーを厳守する等の投稿規定を遵守させ、使用方法は事前説明実施後40日間の試行期間を以て、習得を確認した。掲示板利用は担任と当該実習生のみとし、日に数回の掲示板管理を担任が行った。各実習終了後、4期同一のアンケートを無記名による回答選択および自由記述方式で実施し、回答後回収した。留年者などが含まれているため対象人数に変動がある。<BR>【結果】アンケート回収率は各期とも100%であった。検定にはχ<SUP>2</SUP>検定、比率検定を用いた(P<0.05)。書き込み件数はIからIVの順に298件、172件、202件、164件であった。閲覧者率はI~IVの順に98.0%、84.1%、93.9%、89.1%とIが高値を示し、IIからIVではほぼ一定の約9割の実習生が閲覧していた。書き込み者数はIからIVの順に71.4%、59.1%、46.9%、37.5%と実習が進む毎に低下した。<BR>「掲示板が役立ったか」の問では「全く役立たない・少ししか役立たない」がIからIVの順に4.2%、4.6%、4.1%、11.6%であった。「少し役立った・大変に役立った」では87.5%、69.1%、57.1%、55.9%とIでは高値を示し、IIからIVではほぼ一定の約6割の実習生が「役立った」と答えた。役立った理由は「情報共有と自己と他人の比較、質問への回答、心の支え」等であった。「役立たない理由」は全期を通し、「閲覧する余裕がない」等であった。「書き込みの理由」では全期を通し、「近況報告、質問・相談」が、「書き込めない理由」では、「余裕がない、書くことがなかった」等と答えた。<BR>【考察】閲覧者率と「掲示板が役立った」の回答がIに高値を示した事は、真新しさや、実習当初の不安回避のために心的共有を求めていたと推察された。また、掲示板閲覧率は高いが、書き込み者数が減少したのは、実習が進むと、時間的な余裕が無かったことや実習にも慣れ、学生間の共有する事項が少なくなったことが原因と推察した。今後、プライバシーに関わる内容の削除等書き込み内容の管理システムの構築及び実習施設からも理解を得た運用など、更に検討を重ねていきたい。
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公益社団法人 日本理学療法士協会 | 論文
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