当院及び連携施設における地域連携の現状と今後の課題(第1報):地域連携パスの運用に向けて
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概要
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【はじめに】我々は、第1報にて地域連携での現状と今後の課題について報告した。その課題の解決案の1つとして当院では、クリニカルパスに準じた地域連携パス(以下連携パスと略す)の運用を検討している。連携パスは、予想される生活像を最終生活目標とし、主に各施設のリハスタッフが、短期目標(アウトカム)を設定し、その目標に対しての課題(タスク)を解決してゆく組み立て式のパスである。よって、連携パスを活用するにあたっては、当院から転院・入所施設及び居宅介護支援事業所の協力が必要不可欠である。このため、各方面・各職種より、連携パスに対してのニーズを考慮し、パスの見直しを行う必要があった。そこで、第21回東北理学療法士学会で口演した連携パスを当院と連携のある各施設に対して、第1報で用いたアンケート調査用紙に同封し、意見や改善案を記載してもらうことでパスの見直しを図った。<BR>【対象と方法】対象は第1報で用いたアンケート調査用紙に当院で作成した連携パスを同封し、活用方法や記載内容を含め自由記載方式による意見調査を行った。<BR>【結果】連携に関するアンケートの回収率は73.2%であり、そのうち連携パスへの意見記入率は33.9%であった。主な記入内容は以下の通りである。「ケアプランの一助となる」、「目標が共有でき、施設内でするべき事が明確になる」、「情報のフィードバック機能が良い」等の意見や「共通言語の検討」「内容の簡潔化」「本人・家族の意見の記載をすべき」等、内容に対しての改善案が多く寄せられた(記入率の95.2%)。いずれも肯定的な意見であり、このような連携のためのツールが望まれていることが示唆された。一方で、連携パスを記入する際の負担度を懸念されるという意見もみられた。<BR>【地域連携パスの見直しについて】上記の改善案や記入負担度を考慮し、地域連携パスの見直しを図った。共通言語の使用については、ICFを用い目標設定や課題設定を行うこととした。内容の簡潔化には「できるADL」「しているADL」「するADL」を無くし、家族介護力を含めた「生活障害の把握」のみを評価基準とした。また、本人・家族の意見の記載欄を設け、目標設定を患者主体で設定することを強調した。今後は、このパスを用いることで、どの位効率化が図られ、どの位の負担度が増したかを調査する予定である。<BR>【考察】各施設での役割分担が明確になる中で、地域完結型の医療の確立が最重要課題と考えられている。今後、連携パスを使用し、随時見直しを加え、より実用的なパスの作成を試みる所存である。近い将来、予測生活像より各施設での短期目標を急性期病院で設定することができれば、個別性のある患者用のパスの作成も夢ではないと考えられる。<BR>最後に、自らの医療が最終的にはどのような結果になったのかを認識し、自らの医療を見直す機会にするためにも、このようなパスが必要であると考えている。
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公益社団法人 日本理学療法士協会 | 論文
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