当センターシーティングクリニックにて対応した脊髄損傷者の褥瘡原因について(第2報)
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概要
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【目的】褥瘡に対して医療スタッフは、再発予防の努力をしているが、臨床的に依然として発生、再発の減少を感じない。当センターでは、1998年にシーティングクリニックを開設し、対応した脊髄損傷者の褥瘡の原因追求、そして問題の解決と再発予防のための教育を行っている。原因追及は接触圧測定により、褥瘡部位とその接触圧が異常高値を示すことで原因と考える。今回、前述の方法により、発生環境が車いすであると特定できえた症例に対し、検討した結果、若干の知見を得たので報告する。<BR>【対象】平成10年5月から平成15年9月までにシーティングクリニックで対応した123例で、内訳は男性97例、女性26例。平均年齢37.7歳である。全例脊髄損傷者であり、頸髄損傷47例(38%)、胸髄損傷60例(49%)、腰髄損傷12例(10%)である。不明4例は初期の頃の対象者で、資料上で脊髄損傷高位の特定できない者である。褥瘡発生部位は、坐骨41%、仙尾骨35%、大転子9%であった。褥瘡発生環境は、車いすが48%と約半数を占める。ベッドが20%、床11%、椅子7%、自動車4%等で、車いす以外が過半数である。<BR>【結果】褥瘡発生環境が車いすと思われるものの内、その褥瘡原因の61%がクッションに関するものであった。クッションの不適切な使用によるもの、ガスタイプのクッションでは空気圧が高い、または低く、底付きがみられた。ゲルタイプでは、ゲルの偏りによる底付きがみられた。フォームタイプでは、長期間使用による「ヘタリ」がみられ、圧分散ができない状態であった。全般的に言えるのはクッションに対する知識不足である。このクッションを使用すれば除圧はいらない。クッションには寿命があり、定期的な交換が必要なことを理解していないなどであった。背シートが原因のものは20%であり、操作中、座席背シートパイプが胸部に常時接しているために起こったものがみられた。スタイル優先で背もたれを著しく低くしたため、坐骨に圧集中がみられたり、シート幅を狭くしたため、シートパイプが脊柱に当たっているものがみられた。<BR>【まとめ】当センターのシーティングクリニックで対応した123例の褥瘡を有する脊髄損傷者につき、車いす上が原因と思われた59例について検討した。その原因としてクッションが61%を占め、ほとんどがクッションに関する誤った使用方法、管理などの知識不足であった。<BR>褥瘡予防アプローチ施行から、日常生活で一番長く過ごす車いすに関しては、適切な情報を提供する必要性を感じた。
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公益社団法人 日本理学療法士協会 | 論文
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