通所リハビリテーションにおけるマシントレーニングが有効であった慢性呼吸不全症例
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概要
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【はじめに】近年、虚弱高齢者の介護予防、および要介護高齢者の介護軽減に効果的な手法として、マシントレーニングを核としたパワーリハビリテーションが注目されているが、慢性呼吸不全に対する効果についてはまだ報告は見られない。今回われわれは慢性呼吸不全の急性増悪により入退院をくり返していた重度の低肺機能症例にマシントレーニングを行い、きわめて短期間に運動能力の改善と行動変容を認めたので報告する。<BR>【症例】83歳、女性。2000年10月に気管支喘息と肺気腫の診断を受けた。%VC53.3%、%FEV1.033.8%と、重度の混合性障害で、呼吸困難感のため閉じ込もりの状態であった。家族の希望で2001年7月よりデイケアの利用を開始したが、その後、2003年3月までの20カ月間に、急性増悪によって5回、計122日の入院治療を要した。退院後、2003年5月より通所リハビリテーションを再開し、コンヴェンショナルな呼吸理学療法を行ったが、6月より施設でトレーニングマシンを導入したのに伴い、マシンによるトレーニングを開始した。<BR>【方法】トレーニングマシンはドイツ、ゲルマニア社製ボディースパイダーを使用し、下肢5種目(Leg press・Knee extension/flexion・Hip abduction/adduction)、上肢2種目(Rowing・Chest press)、体幹2種目(Torso extension/flexion)の9種目を実施した。強度はRPEで、Borg scale 11~13の範囲とし、回数は10回1セットで、1セットから3セットへ漸増した。頻度は週2~3回で行った。<BR>【効果判定】体力評価として握力、開眼片足立ち、ファンクショナルリーチ、座位体前屈、落下棒テスト、Timed up & go、6MD、QOL評価としてEQ-5Dを訓練開始前と開始後4、8、12週目に検査し、変化を比較した。<BR>【結果】握力(13.0→15.8kg)、開眼片足立ち(7.8→18.2秒)、ファンクショナルリーチ(26.5→32.9cm)、座位体前屈(-7.0→+7.3cm)、Timed up & go(10.6→8.4秒)、6MD(261→330m)についてトレーニング前後で著明な改善を見た。閉じ込もりは解消され通所頻度は週2回から4回に増加し、その他に毎日2kmの散歩を行うようになった。<BR>【考察】12週という短期間で身体的効果および行動変容が得られたことから、本症例に対してマシントレーニングは極めて効果的アプローチであったと考えられる。今後、本症例については引き続き長期的な急性増悪の抑制効果を検討するとともに、慢性呼吸不全症例全般に対するトレーニング効果についても、症例数を増やして検討していきたい。
- 公益社団法人 日本理学療法士協会の論文
公益社団法人 日本理学療法士協会 | 論文
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