心筋梗塞患者の性機能に関する検討
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概要
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【目的】<BR> 心筋梗塞(MI)のリスクファクターには、HT、DM、HL、喫煙、肥満などが一般的であるが、勃起不全(ED)も多く合併することが報告されている。さらに、EDはQOLとの関連で多くの報告がされている。我々は心臓リハビリテーション対象患者のQOLに影響すると考えられる性機能についてアンケート調査を行い、EDの合併がQOLを低下させる因子となるか否かを検討した。また、EDの有無と一般的なリスクファクターとの関連についても検討した。<BR>【対象】<BR> 2001年11月から2003年9月までに、当センターでの回復期心臓リハビリテーションに参加した男性MI患者94例(39~78歳、平均58.6±8.9歳)。<BR>【方法】<BR> 性機能およびQOLに関するアンケート調査は、発症から平均112.2±84.7日に実施した。<BR> 性機能に関するアンケート調査は独自に作成し、次のような設問とした。「循環器疾患により男性性機能不全が生じる可能性があります。現在の性生活に満足ですか?不満足ですか?」QOLの指標にはSF-36を使用し、日本人の国民標準値をもとにした各下位尺度偏差得点およびサマリー・スコアを求め、性生活に満足(満足群)と不満足(不満足群)を対応の無いt検定で比較した。リスクファクターと性機能との関連では、性生活に満足か否かを従属変数とし、年齢・BMI・DMの既往・HTの既往・HLの既往・過去の定期的な喫煙の有無を共変量としたロジスティック回帰分析を行った。<BR>【結果】<BR> 有効回収率は79.8%(75例)であった。<BR> 現在の性生活のアンケート調査では、「満足」48%(36例)、「不満足」52%(39例)であった。SF-36に関しては、満足群に比較して不満足群で体の痛み(BP)の項目で有意に低い値を示した(p<0.05)。また、その他の下位尺度とサマリー・スコア全てにおいて満足群に比較して不満足群では低い傾向を示した。リスクファクターと性機能との関連では、年齢のみが有意な危険因子として認められた(オッズ比1.13、p<0.05)。<BR>【考察】<BR> 性生活に不満足、いわゆるED有病率は循環器関連疾患で38~75%、透析患者で40~80%、糖尿病患者で20~50%と報告されており、今回と同様な結果となった。このことから、MI患者は透析患者や糖尿病患者と同様に器質性や心因性の両面からEDを生じ、高い有病率を生じていると予測された。SF-36の結果からは、満足群に比較して不満足群でBPが有意に低い値を示した。このことは、MI後の発作の不安が性生活から患者を遠ざけているとの報告もある事から、発作時の痛みへの不安が影響したと考えられた。また、不満足群は満足群と比べて他の項目全てにおいて低い傾向を示していることから、EDがMI後の健康関連QOLと関連している可能性が示唆された。リスクファクターと性機能の関連では年齢が有意な危険因子となったが、加齢による末梢血管系変化やホルモン変動などが影響したと考えられた。
- 公益社団法人 日本理学療法士協会の論文
公益社団法人 日本理学療法士協会 | 論文
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