心疾患患者に対するADL評価の再考:Frenchay Activities Indexによる評価
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概要
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【はじめに】心疾患患者の身体機能評価は,心肺運動負荷試験で求められる最高酸素摂取量や嫌気性代謝閾値,または下肢筋力などによって行われる.また近年,心疾患患者の健康関連QOLの評価についての検討が数多くなされるようになった.しかし,われわれ理学療法士が主にアプローチすべきは日常生活動作(ADL)における課題遂行能力の向上であり,心疾患患者においても例外ではない.心疾患患者に対する移動動作や身の回り動作などの基本的ADLの評価は,Barthel Index (BI)やFunctional Independence Measure (FIM)によってなされてきたものの,手段的ADL(Instrumental ADL,IADL)の評価はあまり行われていない.そこで今回われわれは,IADL評価尺度のひとつとしてFrenchay Activities Index (FAI)を用いて心疾患患者のIADL評価を試み,心疾患患者のADLにおける基本的ADLとIADLの階層性について検討した.【対象】対象は当院にて心臓外科手術を受ける前の心疾患患者34例である.対象の内訳は,男性20例,女性14例,平均年齢は67.0(49-83)歳,冠動脈バイパス術待機患者16例,置換術待機患者12例,大動脈人工血管置換術待機患者4例,その他の開心術待機患者2例であった.なお,ADLの遂行に多大な影響を及ぼすと判断した脳血管障害および整形疾患合併者は除外した.【方法】手術前訪問時にFAI(蜂須賀らの改定版FAI自己評価表を使用)をインタビュー方式にて聴取し,加えてBIを各テストバッテリーの遂行の可否を確認しながら算出した.また,診療録より,年齢,性別,NYHA(New York Heart Association)分類,手術前左室駆出率(LVEF),予定手術式,罹患期間などを調査し,FAIの合計点を疾患ごと,NYHA分類ごと,性別ごとに比較して年齢や手術前LVEF,罹患期間などとの関連性を検討した.【結果】BIの合計得点は全例100点,FAIの合計得点は27.7±7.7(13-43)点(45点満点)であった.FAI合計得点は疾患別,性別とは関係を認めなかったが,NYHA分類が低いほどFAI合計得点も有意に低い傾向にあった(p<0.05).また,FAI合計得点は,年齢,罹患期間との間で相関関係が認められたものの,手術前LVEFとは相関関係を認めなかった.【まとめ】心疾患患者に対するADL評価は,基本的ADL評価法では限界があり,IADL評価により重きがおかれるべきだと考えられた.
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公益社団法人 日本理学療法士協会 | 論文
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