変形性関節症の術前後における日常生活活動の変化
スポンサーリンク
概要
- 論文の詳細を見る
【はじめに】<BR>変形性関節症(以下、OAと略す)は関節の疼痛を主訴とし、関節構成組織の退行性変化に伴う関節機能の低下により日常生活活動(以下、ADLと略す)に支障をきたしやすい疾患である。<BR>全人工関節置換術により、多くのADL制限の改善が期待されているが、術前後のADLの変化を調査した報告は少ない。そこで今回、当院において全人工股関節置換術(以下、THAと略す)、全人工膝関節置換術(以下、TKAと略す)を実施された症例のADLの変化を調査した。<BR>【対象】<BR>対象はTHAを施行された変形性股関節症患者35名をTHA群とした。内訳は男性2名、女性33名であり、年齢は65.2±8.5歳であった。また、TKAを施行された変形性膝関節症患者26名をTKA群とした。内訳は男性5名、女性21名であり、年齢は73.4±6.0歳であった。<BR>【方法】<BR>評価項目はOAで困難をきたしやすい、正座、しゃがみこみ動作、床からの立ち上がり動作、階段昇降動作、靴下の着脱動作、足の爪きり動作の6項目とし、それぞれ自立、困難、不可能の3段階評価とした。自立は、動作による疼痛などがなく道具を使用せずとも可能なものとした。困難は、動作自体は遂行できるが動作を行う際に疼痛の出現を認める場合や、所要時間の増大が認められる場合とした。また、道具等を使用する場合も困難とした。不可能は道具等を用いても、独力では動作遂行不可能な場合とした。上記の項目を、入院時と退院時に評価を行った。<BR>【結果】<BR>両群ともに改善した項目では、床からの立ち上がり動作がTHA群では入院時の自立が34%から退院時では84%、TKA群では35%から81%、階段昇降動作がTHA群では37%から94%、TKA群では23%から77%、爪きり動作はTHA群では17%から23%、TKA群では54%から81%へ増加した。<BR>両群ともに低下した項目では、正座がTHA群では入院時の自立が74%から退院時では46%、TKA群では入・退院時ともに0%、しゃがみこみ動作がTHA群では20%から8%、TKA群では4%から0%へ低下した。<BR>靴下の着脱動作では、THA群の入院時の自立が43%から退院時では17%へ低下を示したが、TKA群では77%から100%へ増加した。しかし、THA群における困難例のうち89%の症例が自助具などを用いることで、動作を遂行していた。<BR>【考察】<BR>今回の結果から全人工関節置換術を施行された患者の入院時から退院時において低下を示したADLの特徴は、TKA群では過度の膝関節の運動が必要とされる動作であり、THA群では過度の股関節、膝関節の運動が必要とされる動作、下方へのリーチを必要とする動作であった。両群ともに脱臼の危険性が考えられる動作において低下を示した。今後、患者の身体状況を考慮し、個別的な動作指導が必要と思われる。
- 公益社団法人 日本理学療法士協会の論文
公益社団法人 日本理学療法士協会 | 論文
- 療養型病院における廃用症候群の予後予測
- 髄腔内バクロフェン治療(ITB)後の理学療法:―歩行可能な症例に対する評価とアプローチ―
- 理学療法士の職域拡大としてのマネジメントについて:―美容・健康業界参入への可能性―
- 脳血管障害患者の歩行速度と麻痺側立脚後期の関連性:短下肢装具足継手の有無に着目して
- 健常者と脳血管障害片麻痺者の共同運動の特徴:―異なる姿勢におけるprimary torqueとsecondary torqueの検討―