脊椎圧迫骨折の予後:アンケート調査より
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概要
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【目的】退行期骨粗鬆症の脊椎圧迫骨折(以下,圧迫骨折)は,骨折が治癒しても受傷椎体の形状が変わるため,治療終了後月日の経過に伴い姿勢や動作に影響を与えることが予測される.圧迫骨折後の痛みや変形についての報告はあるが,生活動態に関する報告は少なく,不明である.そこで今回,圧迫骨折後1年以上を経過した患者を対象に,受傷椎体に関わる症状と日常生活動作についてアンケート調査を行い,圧迫骨折患者の生活動態について検討したので報告する.<BR>【方法】2000年―2002年に当院で治療を行った圧迫骨折患者70名に郵送によるアンケート調査を行い,回答が得られた40名(54.1%)を対象とした.内訳は男5名,女35名,平均年齢70.9歳であった.アンケートには,日本整形外科学会腰痛疾患治療成績判定基準による,自覚症状の項目の腰痛(背部痛を含む),下肢痛およびシビレ,歩行能力,及び日常生活動作の項目を使用した.また,腰痛,日常生活動作については,記述できるようにもした.<BR>【結果】1)腰痛:「常に激しい」はなく,「常にある」は,4名(10%)のみであり,多くは,「ない」か「時々あり」であった.痛みを有するものの詳細は,87.5%の者が重い痛みであった.2)下肢痛およびシビレ:「なし」,「時々」のものが34名(85%)で,腰痛の症状と類似していた.3)歩行能力:25名(62.5%)は全く正常に歩行が可能であった.他,15名中13名は,歩行中に腰痛・背部痛を訴えており9名は500m以上の歩行が可能であった.4)日常生活動作:立ち上がり動作,中腰姿勢の持続のやや困難・困難が,40―50%を占めていた.他の動作に関してはすべて容易が60%以上であった.項目以外の困難な動作は,家事動作,物の持ち上げの記述があった.<BR>【考察】今回の結果から,腰痛や下肢症状については,問題のない者が多く,予後は良好であることが伺われた.しかし腰痛が「常にある」が10%,下肢症状が「常にある」が15%にみられ,これらの者のうち2名のみであるが,歩行能力への影響がみられた.日常生活動作については,立ち上がり動作や中腰姿勢が行いにくく,対象の性差にみられるように,家事動作が多く上げられていた.しかし,これらの動作については,受傷後,年数の経過に伴い,徐々に改善傾向にあった.<BR>【まとめ】圧迫骨折患者の予後は,比較的良好であったが,15%程の者に何らかの問題があり,これらの者についての検討が必要と考えられた.
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公益社団法人 日本理学療法士協会 | 論文
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