体幹同時収縮運動前後の姿勢の変化について
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概要
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【目的】腰椎の分節的安定性に関する先行研究では、ワイヤー電極を用いた筋電図を使用し腹横筋や多裂筋の収縮を測定した研究や、リアルタイム超音波やMRIを使用し多裂筋の横断面積を測定した研究などが多い。しかし、臨床場面ではこれらを使用し評価をすることは実際には難しく、腹横筋と多裂筋の同時収縮を促すエクササイズにより姿勢が変化するかどうか検討したものは見当たらない。今回容易に評価ができる姿勢に着目し、腹横筋と多裂筋の同時収縮を促すエクササイズを行う前後の矢状面における立位姿勢の評価を行い、エクササイズにより姿勢を変化させられるかどうかを検討した。<BR>【対象】対象は、本研究の趣旨に同意を得られた本学学生、および大学院生35名(男性5名、女性30名)とした。<BR>【方法】ランドマーク(外耳、肩峰、大転子、膝関節前部、踵立方関節)にマーカーを貼り付け、無意識にとった立位姿勢、意識的に自分でよいと思われる立位姿勢をそれぞれ保持してもらい、デジタルカメラで矢状面の立位姿勢を撮影した。このとき天井から重錘をつけた紐を吊るし、それを床への鉛直線とした。立位姿勢の撮影後無作為に2グループに分け、グループ1には体幹同時収縮運動(以下、Ex.)を指導し2週間行ってもらった。グループ2は体幹同時収縮運動を行わずコントロール群とした。2週間後、両グループとも再び立位姿勢を同様に撮影した。被験者がEx.を行ったか否かについては、評価者が姿勢の計測が終了するまで分からなくするよう、single blindを行った。<BR> 画像をパーソナルコンピューターに取り込み、鉛直線を踵立方関節に合わせ、踵立方関節から鉛直線と踵立方関節からその他のランドマークとのなす角度をScion Imageソフトにより計測し、0°を理想の角度とした。統計処理はStat View5.0J(SAS Institute Inc.)ソフトを用い、それぞれの角度を合計し2週間前と2週間後の差を算出し、グループ1と2の2群間で対応のないt検定を用いて危険率5%未満で有意差を求めた。<BR>【結果】グループ1と2の意識的に自分でよいと思われる立位姿勢はEx.前後で有意差は認められなかったが、無意識的な立位姿勢においてはグループ1がEx.前後では姿勢に有意な変化が認められた(p<0.05)。<BR>【考察】Ex.を繰り返し行うことによりlocal stabilizerとして腰椎の安定性に貢献する腹横筋や多裂筋の収縮が促通され、それらの筋の活動は高くなる。無意識的な立位姿勢はEx.前後で変化したが、これはEx.によりlocal stabilizerの緊張状態、使い方に変化が起こったためと考えられる。しかし意識的に自分でよいと思われる立位姿勢は随意的にlocal stabilizer以外の筋活動も利用し、コントロールして保持しようとするためEx.前後で変化が見られなかったと考えられる。
- 公益社団法人 日本理学療法士協会の論文
公益社団法人 日本理学療法士協会 | 論文
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