加速度計による外側型変形性膝関節症の運動解析
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概要
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【目的】本邦における変形膝関節症(膝OA)の罹患患者は約千二百万人と推定されており,ほとんどは内側型である。外側型膝OAは欧米に比較して少なく,その病態運動に関する客観的報告はほとんどなされていない。今回,外側型膝OAの病態運動を解明する目的で,3軸の加速度センサを用い歩行時の下腿近位部に生じる振動を健常群,外側型膝OA群で測定した。その結果,外側型膝OA群の病態運動について興味深い知見が得られたので報告する。<BR>【方法】対象は健常群10名,外側膝OA群8名である。健常群:健常群は歩行機能に異常がなく,過去に膝痛の経験がない10名(男性3名、女性7名)である。年齢は63~73歳,平均67.5±2.9である。外側膝OA群:外側膝OA群は歩行時に膝関節痛を有する8名(男性1名,女性7名)である。年齢は44~78歳,平均58.5±10.3である。測定肢は右5肢,左3肢。Kellgren&Lawrenceによる膝OAの病気分類では,GradeI2名,GradeII4名,GradeIII2名であった。外側膝OA群は測定翌日に関節鏡を行い,鏡視下で外側OAと確定診断を行った。本研究で用いた加速度センサは圧電型の3軸加速度センサ(Ma3-04Acマイクロストーン(株))である。加速度センサを足関節外果部と腓骨頭部にそれぞれ固定した。足関節外果部のセンサによって脛骨長軸方向の衝撃加速度をとらえInitial Contactを同定した。腓骨頭部のセンサによって脛骨近位部に加わる加速度を測定した。歩行条件は普通歩行で,非測定肢より歩行を開始し14歩の歩行を行った。その中の6歩目と8歩目から得られた加速度波形を分析した。<BR>【結果】健常群と外側型膝OA群との間に以下のパラメーター(健常群vs外側型膝OA)で有意差が認められた。1歩行周期時間(0.98±0.05%GC vs 0.98±0.01%GC),立脚期内側ピーク加速度(内側2.72±2.72m/ss vs 内側7.43±4.25 m/ss),Initial Contactから立脚期内側ピークに達するまでの時間は(5.49±1.57%1GC vs 6.91±3.14%1GC),Initial Contactから立脚期内側最大速度のピークに達するまでの速度時間(27.31±2.94%1GC vs 39.94±17.94%1GC),立脚期後方ピーク速度は(後方0.26±0.12m/s vs後方0.15±0.21m/s)。<BR>【考察】本研究において,1歩行周期での加速度波形を観察すると,健常群、外側膝OA群ともに歩行初期の時期に加速度の変動が大きいことが確認できた。側方方向加速度波形は荷重反応期の外側加速度ピークは外側膝OAでは認められなかった。逆に荷重反応期に,内側加速度のピークが内側型膝OA群,健常群より著明に認められていた。これは外側型膝OAの特徴的な歩行異常を捉えており,それによって大腿骨,脛骨の外側関節面に圧縮,回旋ストレスが生じ軟骨破壊が生じていると考えられる。<BR>【結論】本研究では外側型膝OAでは立脚初期に生じる内側加速度を制御することが重要であることが示唆された。また、加速度センサを用いての下腿運動の解析によって、外側型膝OAの特徴的な加速度波形を捉える事が可能であった。
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公益社団法人 日本理学療法士協会 | 論文
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