片麻痺患者における歩行能力とバランス能力との関連性について
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概要
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【はじめに】片麻痺患者の歩行能力に与える要因としては、筋力や下肢の重症度などが指摘されている。その中で、バランス能力については、重心動揺計などの測定機器を用いた報告が多い。そこで、今回、我々は、Functional reach test(以下FRT)によるバランス能力と歩行能力における歩行速度および速度を規定する歩幅、歩行率との関連性を検討した。<BR>【対象】対象は、当施設に入所し、理学療法を施行した脳血管障害の利用者で、以下の条件を満たした53名とした。1:診断上、初回の脳血管障害であること、2:装具や補助具、歩行様式の規定はせず自力歩行が行え、更に装具を使用しても立位保持が行えること、3:痴呆や重症な変形性の骨関節疾患を有していないことを条件とした。疾患の内訳、障害名は、脳梗塞33名、脳出血20名、右片麻痺22名、左片麻痺31名であった。性別は、男性31名、女性22名、平均年齢68.4±8.0歳であった。<BR>【方法】歩行測定は、自由歩行速度と最大歩行速度の2種類計測した。測定方法は、10mの秒数と歩数を計測し、歩幅、歩行率、歩行速度を算出した。FRTの測定は、歩行に装具を使用している場合は、装着した状態で行い、肩幅程度に開脚した立位をとり肩90°屈曲位にて、足部を動かさずに、できるだけ前方へ水平移動した上肢の距離を測定した。FRTと2種類の歩行速度および各々の歩幅、歩行率の関連性を検討するため、統計処理は、回帰分析を行った。<BR>【結果】FRTとの関連性でみると、自由歩行速度の相関係数(以下R)=0.84、寄与率(R<SUP>2</SUP>)=0.70、歩幅R=0.88 、R<SUP>2</SUP>=0.77、歩行率R=0.73 、R<SUP>2</SUP>=0.54、更にFRTと最大歩行速度R=0.83 、R<SUP>2</SUP>=0.69、歩幅R=0.87 、R<SUP>2</SUP>=0.76、歩行率R=0.80 、R<SUP>2</SUP>=0.64(全てp<0.01)が得られた。FRTは、全ての項目において高い関連性があり、両速度ともに歩幅の寄与率が高かった。<BR>【考察】】FRTとの関連性において、自由歩行速度は、最大歩行速度に比べ寄与率が高く、よりバランス能力の影響を受けると考えられた。最大歩行速度は、バランス能力のみならず筋力などの要因も関与しているものと推察された。FRTと歩幅との関連性が高いことから片麻痺患者の場合、歩幅の重要な規定要因として、バランス能力が大きく関与していることが示唆された。
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公益社団法人 日本理学療法士協会 | 論文
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