デュシャンヌ型筋ジストロフィー症重症ステージ患者の機能訓練に関する研究:主観的有用度、満足度の検討
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概要
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【目的】<BR> デュシャンヌ型筋ジストロフィー症(以下DMDとする)重症ステージ患者は機能訓練が最も受動的になり、機能訓練に対してどのような要求をすればいいか分からない時期である (河原,2001)。しかし、この時期こそ患者の意見を積極的に取り入れた機能訓練が求められるのではないだろうか。<BR> 本研究では、DMD患者にとって問題となりうる機能訓練やそれに関連した項目を、主観的有用度、満足度を通じて把握することを目的とした。<BR>【方法】<BR>1.対象<BR> DMD患者 ステージ5から8 31名<BR>2.質問紙<BR> 国立療養所徳島病院によるPT・OTアプローチ(武田・多田羅,2000)で示された項目を基礎とし、以下で構成されていた。<BR>1)フェイスシート<BR>2)機能訓練に対する主観的有用度調査(含 自由回答)<BR>3)機能訓練に対する満足度調査 <BR>3.分析<BR> 自由回答部分については、テキスト型データ解析システムソフトウェアWordMiner(株式会社日本電子計算製)を利用した分析を行った。<BR>【結果】<BR>1.DMD患者における機能訓練の主観的有用度の自由回答<BR> 主観的有用度の役立つ、役立たない理由は以下のカテゴリーに分類された。<BR><機能訓練が役立つ理由><BR>1)「進行」を理由とするカテゴリー<BR>2)「活動」を理由とするカテゴリー <BR>3)その他<BR><機能訓練が役立たない理由> <BR>1)「機能訓練内容理解の不十分」を理由とするカテゴリー<BR>2)「実生活との解離」を理由とするカテゴリー<BR>2.DMD患者の機能訓練に対する主観的有用度<BR>「呼吸訓練」、「ずり這いする訓練」、「車椅子を動かす訓練」、「電動車椅子を動かす訓練」などで主観的有用度にプラスの傾向が見られた。<BR>3.DMD患者の機能訓練関連要因への満足度<BR>「機能訓練内容の説明」、「機能訓練に対する意見の反映」、などで満足度にマイナスの傾向が見られた。<BR>【考察】<BR> 主観的有用度がプラスの傾向を示したものは、移動手段の訓練が多くを占めた。これらは、機能訓練場面ではなく日常生活で活用することが多い。ADLに貢献し、日常的に行っている活動は、動作として理解しやすく、機能訓練の目的や意義も明確である。このことから、プラスの傾向を示したと推察された。<BR> 満足度において、特に問題となるものは「機能訓練内容の説明」がマイナスの傾向であることである。担当医師からも機能訓練内容、目的の説明は、必要に応じて行われていた。それでも「機能訓練内容の説明」がマイナスであるには、それ以上の機能訓練の意義を見出せないことが原因であると考えられる。<BR>【まとめ】<BR> DMDに対する機能訓練は予防的なものも多く、現在行っている活動に対して誰にでも効果が明白に現れるものではない。このため説明があったとしても、内容・目的を理解することは困難である。そこで、行う機能訓練に対して常に具体的にイメージしやすい、動作というよりは現在行っている作業の中で何につながるかを提示していくことが必要であるといえる。
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公益社団法人 日本理学療法士協会 | 論文
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