バランスボードを用いた座位立ち直り反応の分析:斜面台傾斜との相違
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概要
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【はじめに】座位バランス障害例の治療において、頭部体幹の立ち直り反応の出現様式を分析しどのような刺激・外乱が有効であるかを検討することが重要である。座位における立ち直り反応には外乱に対して頭部・体幹を鉛直に保持する様態と身体を傾斜させた状態から随意的に立ち直る様態の二つが考えられる。これらの立ち直り反応の出現様態を明らかにし、患者の治療的アプローチに応用することを目的に健常者における検討を行ったので報告する。<BR>【対象と方法】対象は健常青年9名(男性5名、女性4名)、平均年齢22.4±0.5歳であった。すべての被験者に研究の趣旨を説明し書面にて同意を得た。被験者にはティルトテーブルに横向きに大腿長の遠位25%を座面端より出して腰掛け、足底非接地で次の二つの課題を施行した。課題1:ティルトテーブルを一定速度で7度傾斜させた。課題2:バランスボード上で被験者に座位をとらせ、バランスボードを他動的に20度傾斜させた状態から自力での立ち直りを施行した。計測は左側を下に傾斜する方向(左傾斜)から左右右左の順序で行った。被験者の胸骨柄に床面と垂直になるようジャイロセンサを設置して、サンプリング周波数60Hzで三次元の角速度を8秒間測定した後、角度変換し振幅の最大値を算出した。同時に後方にデジタルビデオカメラを設置し、被験者の頭部(外後頭隆起)・両肩峰・脊柱(C7・T7・L3棘突起)・両上後腸骨棘の合計8つの反射マーカーを貼付し、動作分析ソフト(DKH社製Frame-DIAS2)を用いて二次元座標を算出した。統計学的検定は一元配置分散分析を行った。<BR>【結果】ジャイロセンサによる計測の平均値は、課題1の左傾斜で体幹伸展0.06±1.4度、左側屈0.58±1.7度、右回旋0.27±1.8度でそれぞれに差は認められなかった。右傾斜でも同様に差を認めなかった。課題2の左傾斜では伸展1.52±3.9度、左側屈6.64±5.9度、左回旋9.08±3.4度であり、回旋が有意に大きかった(p<0.05)。課題2の右傾斜では屈曲0.13±4.6度、右側屈4.51±7.1度、右回旋7.90±5.1度であり、同様な結果を得た。デジタルビデオカメラによる計測では課題1において、静的座位からの体幹角度の変位が他の部位よりも大きいものの、その他の部位では大きな変位は見られなかった。課題2においてはどの部位でも大きな角度変位が見られた。<BR>【考察】ティルトテーブルによる傾斜刺激外乱に対する立ち直り反応では、上部体幹と下部体幹の間での運動が主であり、体幹の回旋もほとんど見られていないのに対して、バランスボードで随意的に立ち直る課題では解析を行ったすべての部分で運動が起こっており、体幹の回旋も大きかった。このことは随意的に立ち直る課題のほうが頭部から骨盤までの協調した運動が必要であることを示し、従来いわれている体幹側屈の立ち直り反応に加えて体幹回旋も関与することが示唆された。
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公益社団法人 日本理学療法士協会 | 論文
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