健常若年者における下肢の機能的左右差に関する検討
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概要
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【目的】<BR> 下肢では通常、軸足や利き足の存在が知られているにも関わらずその左右差に関する報告は充分とは言い難い。そこで今回我々は、下肢の左右差に着目し、軸足あるいは効き足として機能優位性に差があるか否か検討し若干の知見を得たのでここに報告する。<BR>【対象】<BR> 実験に先立ち、健常成人291名(平均年齢20.9±4.24歳)を対象に軸足、利き足調査を目的に、設問24項目のアンケートを行った。アンケート調査結果よりサンプルクラスター分析にて、軸足左群、軸足右群、軸足両群の3群に区分し、軸足左群より軸足に関する実験の対象者68名を抽出した。さらに効き足に関する実験として、同様の調査より変数クラスター分析によって効き足の設問とされた9項目についてすべて右と解答した効き足右群の中から男性10名を抽出し対象者とした。<BR>【方法】<BR> 軸足実験では、床反力計(AMTI)による鉛直分力と相関が確認された足圧分布測定システムF-SCANSOKET(NITTA)を用い、安楽な直立両脚立位を行い、左右の荷重値、足蹠面積を10秒間計測した。また、重心動揺解析システムG6100(アニマ)を用い、片脚立位10秒間における重心動揺を測定した。<BR> 効き足実験では下肢のパフォーマンス評価として、椅座位にて、圧センサーLUR-A-SA1(KYOWA)を設置固定した自作のタッピング装置上を足関節底背屈運動でタップさせた。タッピング運動は一貫して出来るだけ速く行わせた。データは、NR-2000USB対応PCカード型データ収集システム、STRAIN AMPLIFIFIER(DPM-713B)を使用し、10秒間収集し、単位時間当たりのタップ数、足底圧、間隔時間を計測し、パフォーマンスの安定性を示す指標として、足底圧・間隔時間の被験者内変動係数を算出した。左右の有意差検定には対応のあるt検定を用いた。<BR>【結果】 <BR> アンケート調査では、サンプルクラスター分析により軸足左群89.3%(260/291人)、軸足右群4.8%(14/291人)、軸足両群5.4%(16/291人)と区分された。<BR> 軸足実験では、荷重値、足蹠面積ともに左右で有意差は認められなかったが、荷重値において66.2%(45/68人)の者が左で高値を示し、母比率検定で有意であった(p<0.05)。片脚立位時の重心動揺では、総軌跡長、単位軌跡長ともに、左で有意に低い値を示した(p<0.05)。<BR> 効き足実験では、単位時間当たりのタップ数、足底圧、間隔時間と足底圧、間隔時間の変動係数ともに、有意な左右差は認められなかった。<BR>【考察】<BR> 荷重値において右より左で大きい者が全体の66.2%を占め、また左片脚立位時の重心動揺が有意に低値を示したことは左足が体重を支える軸足としての機能をより優位にもっていると推測される。パフォーマンス評価では左右差は認められなかったが、下肢では歩行など対称的で粗大な運動が多く上肢ほどパフォーマンスに偏りが見出しにくいと推察される。しかし、課題の選択については検討の必要もあり今後の課題としたい。
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公益社団法人 日本理学療法士協会 | 論文
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