足関節痙縮に対する持続伸張と連続的他動運動が麻痺側下肢の運動機能に及ぼす影響
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概要
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【はじめに】<BR> 我々は第38回の本学会において、足関節痙縮に対する持続伸張(Prolonged Stretch;PS)と連続的他動運動(Continuous Passive Motion;CPM)が、足関節底屈トルクを減少させ、その減少は双方とも同様であったと報告した。そこで今回我々は、脳卒中片麻痺患者の足関節痙縮に対するPSとCPMが、麻痺側下肢の運動機能に及ぼす影響を検討したので報告する。<BR>【対象・方法】<BR> 対象は脳卒中片麻痺患者4名(男性3名、女性1名)である。方法は麻痺側足関節に対し治療としてPSとCPMを行い、その前後に麻痺側下肢の運動機能の評価を実施し比較検討を行った。<BR> 治療肢位は双方とも背臥位にて膝関節0°としPSでは最大背屈位で持続的な伸張を加え、CPMは運動範囲を底屈45°から最大背屈位とし角速度10°/secにて背屈及び底屈筋群への反復的な伸張刺激を行った。双方とも治療時間を15分間とし、対象毎に治療順序を無作為に選択した。なお各治療間隔は24時間以上の間隔を設けた。<BR> 麻痺側下肢の評価は、治療前後に椅座位にて足関節背屈位での膝関節伸展運動を課題とし、5秒間の最大等尺性運動を実施した。なお予め数回の練習とオリエンテーションを行い再現性のある運動ができていることを確認した上で計測を実施した。<BR> 計測には、日本光電製 Neuropack MEB-2200を使用し、運動中の前脛骨筋(TA)、ヒラメ筋(SL)、腓腹筋内側頭(MG)、大腿直筋(RF)、内側広筋(MF)、内外ハムストリングス(MH,LH)の計7つのEMGを導出し、各筋の積分値を算出した(周波数応答10Hz-1KHz・サンプリング周波数2KHz)。得られた積分値を基に、治療前を100%とし場合の治療後の値を求め、各治療前後の筋活動パターンの変化を比較した。<BR>【結果】<BR> PS後の下肢筋活動は、TAにおいて平均7.2%の増加を認め、RFでは10.5%、MFで17.1%の増加を認めたが、SOLも21.02%と増大していた。一方CPMでは、 TAにおいて平均26.9%、RFでは9.8%、MFで36.0%の増加が認められ、SOLで平均22.4%減少し、MGにおいては36.7%の減少を認め、CPM後の下肢筋活動の方が、より分離運動が可能となっていた。<BR>【考察】<BR> 今回の結果では、PS及びCPM双方とも治療後において膝関節伸筋群の筋活動の向上を認め、脳卒中片麻痺患者の足関節痙縮に対する伸張刺激が、隣接する筋群にも影響を及ぼすことが推察された。さらにCPM後の足関節背屈・膝関節伸展運動が、PS後よりも筋活動パターンがより正常化していた。したがってPSのように単一の筋群をターゲットとした伸張刺激よりも、CPMのように屈筋群、伸筋群双方への伸張刺激を加える方が、より麻痺側下肢全体の運動機能に好影響を及ぼすことが推察された。
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公益社団法人 日本理学療法士協会 | 論文
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