両側下腿切断者に対する中周波電気刺激の筋力増強効果について
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概要
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【目的】<BR> 下肢切断者の理学療法における筋力増強運動は、断端の成熟度や幻肢痛などにより積極的に施行できない場合がある。また、運動の方法についても徒手や重錘による抵抗運動時に、充分な固定性を得ることが困難であるなど難渋する機会を経験する。今回、両側下肢切断者に対し、疼痛が少なく筋力増強に適していると言われる中周波電気刺激を用いて、筋力増強に効果を与えるかについて検討した。<BR>【対象・方法】<BR> 対象は、56歳、男性、原因不明の足部壊疽による両下腿切断術を施行後5週間の症例とした。なお、中周波電気刺激について充分に説明し同意を得た。中周波刺激装置にはNihon Medix製M-STIM2020を用い、7cm×9cmの導子を通電側である右大腿四頭筋上に装着した。周波数60Hz、搬送周波数2.5kHz、通電時間と休止時間は各10秒とし、時間は10分間、刺激強度は対象者の耐えうる最大強度とし、頻度は1週間に5回、12週間行った。また、通電中は大腿四頭筋の随意収縮を行わず、姿勢は安楽仰臥位とした。通電側と非通電側との条件を一定にするために、電気刺激以外は両側下肢ともに同様の理学療法を施行した。効果の評価方法として4週に1度、両大腿周径を膝蓋骨上縁より5cm、10cm、15cmで測定、またBiodex Medical Systems Inc製BIODEX SYSTEM 3を用い、膝関節屈曲60°位での最大等尺性筋力を3回測定し平均値を算出した。 <BR>【結果】<BR> 開始前の大腿周径は、膝蓋骨上縁5cmで右33cm、左33cm、10cmは右35cm、左36.5cm、15cmでは右37.5cm、左38.5cmであった。終了時は、5cmで右36cm、左35.5cm、10cmは右38.5cm、左37.5cm、15cmでは右43cm、左42cmと両側ともに増加し、また通電側の方が大きな増加が見られた。最大等尺性筋力の平均値では、開始前、右17.5Nm、左17.5Nmであり、終了時は右53.9Nm、左48.1Nmで周径と同様に通電側の方が大きな増加が見られた。<BR>【考察】<BR> 両側下腿切断者の大腿四頭筋に対し、中周波電気刺激を実施した。結果、左右ともに大腿周径、最大等尺性筋力の平均値が増加し、また通電側の方が非通電側より大きな値を示す傾向にあった。刺激条件下での中周波電気刺激が筋力増強に効果を与えたことが示唆された。これは切断者のみならず、術後早期より筋力増強が可能な手段であると考えられる。今回、臨床上簡便に評価可能な周径、筋力を効果判定要素としたが、より明確な効果の検証を行うためには、経時的に撮影したMRI画像等を用い筋断面積の算出が今後の課題と思われる。また、症例を増やし、筋力増強に効率良い条件設定の検証を行っていく必要がある。
- 公益社団法人 日本理学療法士協会の論文
公益社団法人 日本理学療法士協会 | 論文
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