後肢懸垂前のトレッドミル走行がラット骨格筋の毛細血管構造に及ぼす予防効果:共焦点レーザー法による骨格筋毛細血管の3次元構造解析
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概要
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【目的】人工関節置換術時には術後に安静臥床が強いられる.このため術後リハビリテーションが効率的に遂行されるように術前からの運動療法が広く行われるようになってきた.しかし,その効果に関する知見の集積はいまだに乏しい.そこで,術前の運動が骨格筋の毛細血管(CAP)構造に及ぼす予防効果について,動物を用いたモデル実験を行った.<BR>【方法】Wistar系雄ラットに対して,2週間の後肢懸垂をする群(HS),後肢懸垂をする前にトレッドミル走行をする群(Ex-HS)および対照群(CONT)について,ヒラメ筋のCAP構造を共焦点レーザー法(CLSM)により解析を行った.ラットをネンブタール(50mg/kg,<I>i.p.</I>)で麻酔した後に腹大動脈へカニューレを挿入し,ヘパリン溶液およびcontrast mediumを120mmHgの圧で注入し,ヒラメ筋を摘出,凍結切片を作成した.CLSMで筋切片中100ミクロンに存在するCAPのスキャニングし,スタックした画像からCAPの3次元構造を構築した.この画像からPCを用いて画像解析し,単位CAP密度,骨格筋線維方向に並走する縦走毛細血管(L-CAP)および横走吻合毛細血管(A-CAP)の数と内径を計測した.各測定データはMann-Whitney検定で有意差(p<0.05)を判定した.<BR>【結果】CLSMの3次元構造解析によりL-CAPとA-CAPが観察された.廃用性筋萎縮によりCAP密度は有意な低下を示し,L-CAPおよびA-CAPの内径が有意に縮小,A-CAP数が有意に減少していることが観察され,L-CAPとA-CAPが筋萎縮に対して異なる反応を示す所見が観察された.また,2週間の後肢懸垂によりHS,Ex-HSともに有意な筋湿重量の減少が観察されたが,CAPを観察するとEx-HSにおいては,HSと比較して有意なCAP密度の増加,L-CAPおよびA-CAP径の有意な拡大およびA-CAP数の有意な増加が観察された.<BR>【考察】骨格筋の萎縮に伴い酸素需要の低下が生じる.その結果,酸素供給が減少しCAP密度が減少すると共に,さらに筋萎縮の進行させるものと考えられている.本研究で得られた結果は後肢懸垂による筋萎縮の進行過程で生じるCAP構造の変化に対して,トレッドミル走行による運動刺激がCAP構造の変化抑制に働きかけた現象であることが推察される.これらの結果から,後肢懸垂前の運動が後肢懸垂中のCAP密度の減少を抑制し,廃用性萎縮の進行を予防できたことを示唆し,術前リハビリテーションの有用性を検証するものと考えられる.
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公益社団法人 日本理学療法士協会 | 論文
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