体組成と骨密度の関連性に関する研究:下肢の体液と骨密度の関連性について
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概要
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【目的】骨密度は、lean body mass(以下、LBM)や体力などに相関し、とくに下肢の筋力との密接な関連性が示唆されている。すなわち、下肢における筋力や体組成の量的な条件は、骨密度への影響因子といえ、下肢の筋力発揮因子である筋量は、筋組織の構成成分である体液との関連が考えられる。しかし、形態的な体組成と骨密度の研究は数多いが、体液などの体内成分との関連性についてはいまだ明らかとはいい難い。本研究では、Segmental Bioelectrical Analysis(以下、SBIA)法を用いて、下肢における体液が骨密度に及ぼす影響について検証した。【対象と方法】対象者は青森県内に居住する健康で日常生活に問題がない50歳以上の中高年女性68名であった。さらに、骨吸収マーカーとして、尿中デオキシピリジノリン(以下、DPD)を測定し、DPD値が正常範囲(2.8_から_7.6nmol/mmol・CRE)である25名を対象とした。体組成の測定には、多周波数でSBIA法を使用しているBiospace社製のIn Body 3.0を用いて、LBM、右下肢の体液量を測定した。骨密度の測定には、Lunar社製超音波骨量測定装置A-1000を用いて、右踵骨の骨量を測定し、結果の検証には、stiffness index(以下、ステフネス)を用いた。そして体力の指標として握力を用いて、2回の測定を行い高い値を採用した。結果の分析は、統計ソフトSPSS11.0J(SPSS社製)を用いて平均と標準偏差を示し、相関を求めた。有意差の検定は、独立標本t_-_testを用いて行い、危険率p<.05を有意水準とした。【結果】対象者における右握力は23.4±3.57kg、右下肢の体液量は3.91±0.58L、LBMは37.6±4.17kg、右踵骨ステフネスは65.3±12.13%であった。右踵骨ステフネスと握力との相関はr=.619(p<0.01)、LBMとの相関はr=.449(p<.05)、右下肢の体液との相関はr=.513(p<.05)であった。また、右下肢の体液と右握力との相関はr=.792(p<0.01)、LBMとの相関はr=.935(p<0.01)であった。【考察】本研究による結果から、骨密度には体力が大きく影響していることが再確認された。それに対して、右踵骨ステフネスと右下肢の体液との相関はr=.513(p<.05)を示しており、LBMとの相関r=.449(p<.05)より高い結果を示した。さらに、体力の指標である右握力と右下肢の体液との相関はr=.792(p<0.01)で、体力と体液には高い関連性が示唆された。言い換えれば、体力は体液に相関しており、体液と骨密度には高い関連性が考えられた。そして加齢に伴い減少する体液は、加齢に伴い減少する骨密度に影響していることが考えられた。
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公益社団法人 日本理学療法士協会 | 論文
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