起き上がり動作に対する2つの介助法に違いはあるか?
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概要
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【はじめに】救命医療の進歩に伴い重度障害者に対する理学療法の機会が増加する中、寝たきりの患者を臥位から坐位へ起こすには、セラピストに大きな介助負担が必要となる。昨年、本学会で背臥位からの起き上がりで初期と後期に介助力が増加し、側臥位からの起き上がりで介助力が減少することを報告した。今回、起き上がり動作介助の片手介助法と両手介助法は、どちらが介助者にとって大きな力を出せるか実験したので報告する。 【対象】健常成人で本実験の主旨に同意した男性9名と女性9名の計18名で、男性平均年齢は25.9±5.0歳、体重66.3±5.4Kg、身長174.4±6.2cm、女性は23.2±7.1歳、体重53.4±7.2Kg、身長161.3±7.2cmである。 【方法】サンクリエイト社製紳士ボディYK-8(以下、ボディ)の肩にCybex IIの入力桿(長さ50cm)を取りつけ、ボディを引き起こす力(以下、介助力)を測定した。測定方法は、側臥位から端坐位までを想定した方法1)片手で引き起こす(以下、片手介助)、背臥位から長坐位までを想定した方法2)両手で引き起こす(以下、両手介助)の2つを行った。被検者は、片手で起こす方法では右前腕をボディ背側に当て引き起こし、両手で起こす方法は両手をボディの肩に掛け引き起こした。測定範囲は、ボディが床面に平行な0゜から90゜までであり、入力桿の回転速度は毎秒30゜とした。被検者は数回練習後、3回測定した。介助力は、トルク値を体重で除した値とした。 【結果】片手介助によるトルクは、15°から45゜の間を頂点とした放物線を描いており、両手介助によるトルクは、片手介助力に比して10゜までの立ち上がりが急で大きく、15゜から45゜の間では両手介助力が片手介助力を下回り、60゜から再び両手介助が上回っていた。最大介助力と発揮角度は、男性で片手介助力3.3±0.5Nm/Kg、角度は23.3゜±10.5゜、両手介助力2.6±0.65Nm/Kg、角度は31.8±23.0゜で両者間に有意差(p<0.05)を認めた。女性では、1.9±0.6Nm/Kg、角度は17.6゜±10.0゜、両手介助力1.7±0.4Nm/Kg、角度22.6±19.8゜で両者間に差はなかった。【考察】起き上がり動作介助での介助者への負担増大要因は、_丸1_寝たきり患者の体重、_丸2_介助者の体幹前屈と回旋、_丸3_介助動作の遂行速度がある。引き起こし速度を一定にした両手介助力は、起き上がり初期に大きな介助力が生じたが、これは背筋と瞬発的な右下肢の伸展力によると考えられる。片手介助力が、起き上がり角度15゜_から_45゜の間で両手介助力より大きいのは、右上肢屈筋内転筋力、腹筋と背筋、両下肢筋力を介助に利用したためと推察された。両手介助力が、低いのは、_丸1_ボディを引き起こす被検者の両肘が伸展位となり力が入らない。_丸2_ボディと被検者の距離が遠く重心移動を有効に利用できない。_丸3_被検者の右膝が早い段階で伸展位に達し、下肢伸展筋力が十分使えないためと推察された。
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公益社団法人 日本理学療法士協会 | 論文
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