理学療法士養成教育における臨床実習の現状:指導者へのアンケートを通じて
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概要
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【はじめに】臨床実習は実習施設の理学療法士が,養成校より依頼され実習指導を行っているのが現状で,指導者の身分保障,指導者への研修など一部の養成校にて対策は講じられつつあるが,指導者間の指導内容の格差,採点の標準化の困難さなど課題は多い.当校においても附属病院を有するものの過半数は外部機関に実習を依頼しており,学校,指導者および学生間の調整の困難さを感じている.また,全国的な臨床実習時間数縮小傾向の中,当校としては臨床実習を重要視しており,今後臨床実習をより有効かつ有意義なものにするための一助として実習指導の現状を把握するため,今回我々は指導者にアンケートを行い若干の知見を得たので報告する.【対象と方法】平成14年度の当校理学療法科3年生31名に実習指導を行った指導者に対し,1から3期の各期ごとに臨床実習に関する同一のアンケートを行った.有効回答数77(84.6%)で内訳は,男性50名,女性25名,平均年齢29.9歳±6.8で実質指導者数45名であった.アンケートの内容は(1)経験年数,(2)最終期の実習到達目標,(3)一日あたりの指導時間,(4)指導上困ったかどうか,(5)項目(4)を細分化した上で困ったかどうか(1.学生への指導,2.患者職員間の調整,3.指導方法,4.評定方法,5.養成校との調整,6.環境面)でその他に実習評点を加えて検討した.(2)(4)(5)は5段階より選択とし,(4)(5)は指導者のストレスとして取り扱った.なおアンケートは他に指導上重要視した点などの項目があるが,今回の報告では省略した.各項目間の検討には,スピアマンの順位相関を用いた.【結果と考察】指導者の考える最終期の到達目標は,平成9年度理学療法白書の結果と類似し,比較的低い段階の目標に集中したものの全体的にばらつきがみられた.これは,指導者によって到達目標が異なることを示唆するものの,経験年数,指導時間数,ストレス,実習評点との関係では有意な相関は見られなかった.各期ごとに見た場合,一部の期において指導時間と経験年数あるいは到達目標間に若干の傾向がみられた.ストレス内容については学生への指導が最も多く,評定方法,患者職員間の調整,環境面が続いた.当校の臨床実習指導者は,養成校との調整にあまりストレスを感じていないが,学生指導,評定,職場の人的物的環境にストレスを感じている傾向であることが把握できた.
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公益社団法人 日本理学療法士協会 | 論文
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