在宅介護者のQOLと介護負担について
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概要
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【はじめに】介護保険制度の普及により、要介護者の在宅生活を維持するために様々な在宅サービスが行われてきた。一方、介護者には介護負担が生じ、様々な要因が影響していると思われる。前回我々は、介護者の介護負担感の要因について検討を行ったが、今回介護者自身のQOLと介護負担感及び要介護者のFIMとの関連について検討したので報告する。【対象および方法】対象は、訪問リハビリ利用者の主たる介護者78 名(内訳女性60名、男性18名、平均年齢61.1±13.2歳)である。調査期間は2002年6月から2002年11月までとした。調査方法は質問紙を用いて自己記入または聞き取りにて施行した。調査内容は介護者の基本属性(年齢、性別、続柄)や就職の有無、罹患、世帯構成、介護期間、Zaritの介護負担尺度、QOL評価とした。QOL評価には8つの下位尺度(身体機能・日常役割機能(身体)・身体の痛み・全体的健康感・活力・社会的生活機能・日常役割機能(精神)・心の健康)から構成されるSF-36を用いた。さらに、要介護者の要介護度とFIMについて調査を行なった。SF-36の各下位尺度得点は、全国調査の総サンプル平均値と標準偏差から標準化した偏差値を算出し、各調査項目の関連を比較検討した。【結果および考察】介護者のQOLと介護負担感の関係では、QOLの8つの下位尺度中2つの下位尺度「社会生活機能」(r=0.6)と「活力」(r=0.5)において負の相関が認められた。介護者の年代別QOLでは、30代の「心の健康」と40代以上の全QOLが低い傾向を示した。一方、続柄別のQOLでは、妻・娘・夫で偏差値が低く、嫁・息子では高い傾向を示した。また、介護者のQOLと要介護者のFIM合計点との関係では、回帰曲線がU字型を示す傾向があり、FIM合計点の中間領域でQOLの低下が認められた。介護者のQOLのうち、他者との交流や日常生活への活力が阻害されている背景に、介護を担うことによる身体的・時間的拘束が関与しているのではないかと思われた。介護者のQOLは年齢とともに低下を示していたが、介護者自身の罹患や身体機能の低下も関与していると思われる。また、若年者の「心の健康」の低下は、介護負担が情緒面へのストレスを与え易いことを示唆している。介護者が配偶者や娘の場合では、介護の必要性のため他者との交流が減少し、介護中心の生活環境が介護負担感を高めQOLの低下に起因しているではないかと推察された。【まとめ】介護者のQOLと介護負担感、要介護者のFIMとの関連を比較検討した。訪問リハビリにおいても要介護者の身体機能だけではなく、介護者の社会的背景を考慮し、介護負担の軽減を図ることも必要と考える。
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公益社団法人 日本理学療法士協会 | 論文
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