ハンドヘルドダイナモメーターによる等尺性股伸展筋力の測定:固定方法が測定値に及ぼす影響
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概要
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<B>【はじめに】</B>ハンドヘルドダイナモメーター(以下HHD)の徒手固定においては,被検者の筋力が大きい場合や検者の固定性が不十分な場合には,その測定誤差が大きいことが指摘されている.加藤らは,固定性を配慮したHHDによる等尺性膝伸展筋力と股外転筋力の測定方法を考案し,良好な再現性を有することを報告している.本研究では,特定した場所を要しない等尺性股伸展筋力測定方法を考案し,test-retestの再現性,及び測定方法の違いが測定値に及ぼす影響を検討した.<B>【対象】</B>健常者42名,年齢20.5±1.7歳,身長166.0±8.3cm,体重56.2±9.2kgの片脚,計42脚である.腰部,下肢関節に整形外科的疾患や疼痛を有する脚はなかった.対象には本研究の目的,内容を説明し同意を得たのち,測定を行った.<B>【方法】</B>機器はアニマ社製徒手筋力測定器μTas MF-01を使用した.股伸展筋力はベッド上腹臥位で,センサーパッドを下腿遠位部,および大腿遠位部に面ファスナーで取り付けた状態での等尺性筋力を測定した.その際,測定部位はベッド端から出した状態とした.下腿遠位部での測定は,ベルトをベッド下の支柱に連結した状態(以下,ベルト固定),およびベルトを検者が足で踏みつけて固定した状態(以下,足踏)の2通りの測定を行った.大腿遠位部での測定は,ベルトをベッド下の支柱に固定した(以下,大腿固定).各方法にて3秒間の股関節伸展等尺性収縮を便宜上30秒以上の間隔をあけ,2回行い,その中での最大値を値とした.また,test-retestによる再現性を検討するために,同計測を日を変えて計測した.検者(身長171cm体重94kg)1名であった.分析方法は,測定方法間の検討は,対応のあるt検定,及びピアソンの相関係数を用い,危険率5%をもって有意とした.test-retestの再現性は,級内相関(以下ICC)を用いた.<B>【結果】</B>等尺性股伸展筋力測定値は,1日目,2日目の順に,足踏22.4±6.89kg,21.1±6.63kg,ベルト固定20.4±6.18kg,19.6±6.61kg,大腿固定27.36±8.36kg,29.5±10.48kgであった.足踏-ベルト固定間の比較では,足踏が有意に高値を示し,相関係数0.847であった.各測定方法におけるtest-retestのICCは,足踏0.874,ベルト固定0.837,大腿固定0.867であった.<B>【考察】</B>いずれの方法においてもtest-retest間で高い再現性を示したことから,同一検者による同様の設定で測定された測定値を比較することは可能と考えられた.足踏とベルト固定間では,両者ともtest-retest間で高い再現性を示し,両者間の相関が高いものの,有意に足踏が高値を示した.したがって,両者の比較は考慮する必要があると考えられる.今後,体格等異なる検者による測定が測定値へ及ぼす影響などについても検討していきたい.
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公益社団法人 日本理学療法士協会 | 論文
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