ハンドヘルドダイナモメーターによる等尺性膝伸展筋力測定の妥当性
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概要
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【はじめに】歩行や立ち上がりなどの動作能力と下肢筋力の関連は周知のことであり,筋力測定はその動作能力の要因を検討し,治療プログラムの立案や訓練効果を検討するうえで重要である.下肢筋力評価には,膝伸展筋力が代表値として利用され,等速性筋力測定装置を使用した多くの報告がある.しかし,価格性,運搬性,測定の簡便性の問題があり,一般的に使用できないのが現状である.一方,ハンドヘルドダイナモメーター(Hand held Dynamometer;以下HHD)は,前述の問題に関しては優れているものの,固定性に問題があり,十分な信頼性が得られないことが指摘されている.我々は,これらの点を考慮して,HHDに固定用ベルトを装着した等尺性膝伸展筋力測定方法を考案した.この測定方法の再現性が良好であることはすでに明らかにされている.本研究では,これまで検討されていない妥当性について検討したので報告する.【対象・方法】対象は,健常者と下肢の整形外科的疾患を有さない当院の入院患者の合計48名96脚(男性23名,女25名),平均年齢36.8歳,平均身長162.8cm,平均体重56.2kgであった.HHDでの等尺性膝伸展筋力測定は,アニマ社製μ-TasMF-01(以下μ-Tas)を用いた.μ-Tasの妥当性を検討するために,測定時の固定が充分であるBiodex社製Biodex 2AP(以下Biodex)との相関を調べた.測定肢位は,両機器ともに下腿下垂位にて両手で検査台の端を把持した端座位とし,センサーを下腿遠位部に設置した.Biodexでは体幹,骨盤及び大腿を検査台にベルトで固定した.測定は,いずれの方法も左右2 回施行し,その最大値を採用した.統計方法は,両器機の相関をピアソンの相関係数を用いて検討した.なお有意水準は1%とした.【結果と考察】μ-TasとBiodexとの間の相関係数は,r=0.981と有意な正相関を認めた(p<.001).さらに,μ-Tasの測定値を20kgごとに区切って検討した場合0-19kg(n=24),20-39kg(n=24),40-59kg(n=21),60-79kg(n=27)の相関係数は,それぞれ,r=0.932(p<.001),0.844(p<.001),0.836(p<.001),0.493(p=.017)であった.μ-Tasでの筋力値が60kg以上の場合は両機器の相関が若干低い傾向にあり,測定中の体幹や骨盤などの固定性が測定値に影響することが示唆された.しかし,この筋力値は,20-30歳代健常男性の比較的高い筋力値に相当しており,動作能力との関連で問題となる筋力水準においてはμ-Tasの妥当性に問題がないことが明らかとなった.
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公益社団法人 日本理学療法士協会 | 論文
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