高齢者における平衡機能評価の相関性
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概要
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【目的】 高齢者の転倒の5から15%は骨折等の重大な障害ひいては、機能低下や寝たきりを引き起こす。また、高齢者の転倒の約半数が、つまずき、すべりといった外乱刺激が加わり生じていると報告されている。そこで今回、臨床で一般的に用いられている10m歩行時間や片足立ち時間、機能的リーチといった従来の検査に加え、安静立位時に不意に床面を動かす刺激を加えることで生じる姿勢反応を測定し、項目間の相関について検討した。【方法】 対象は65歳以上の高齢者59名(男性9名、女性50名、平均年齢77.4±6.4歳)とした。バランス評価項目は、それぞれの検査の特徴から3つに分類した。1つ目は、動作時の平衡機能評価を目的とし、10m歩行時間、機能的リーチ、最大一歩幅を測定した。2つ目は、静的姿勢保持能力を評価目的とし、片足立ち時間、開閉眼時の重心動揺計検査を測定した。3つ目は、外乱刺激時の姿勢反応の測定を目的とし、床面が前後水平方向に動く動揺機を用いた足圧中心の測定、同時に筋電図を用いた下肢筋(大腿四頭筋、前脛骨筋、ハムストリングス、腓腹筋)の反応潜時の測定を行った。また、筋力の指標として握力も測定した。 以上の項目を、正規性のあるものはピアソンの相関係数を、正規性の無いものはスピアマンの相関係数を用いて統計的処理を行った。【結果】 握力、動作時平衡機能を評価した項目は、静的姿勢保持能力を評価した項目や、前方外乱刺激時の足圧中心の最大移動距離と相関が認められる一方で、下肢筋の反応潜時とはほとんど相関が認められなかった。【考察】 動作時の平衡機能評価の各項目は、相関の認められた項目が示す静的姿勢保持能力や重心移動可能な範囲の大きさ、筋力などを総合的に反映していると推察される。しかし一方で、下肢筋の潜時との相関が認められなかったことから、従来行われている平衡機能評価は、外乱刺激に対する姿勢反応能力を反映していないと考えられる。【まとめ】 従来の平衡機能評価項目は、互いに相関が認められ、動作時の平衡機能評価は多くの能力と関連があると示唆された。一方で、外乱刺激に対する下肢筋の潜時との相関は認められず、転倒を評価するうえで外乱刺激時の姿勢反応測定の必要性が示唆された。
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公益社団法人 日本理学療法士協会 | 論文
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