新生児に対する非浸襲的,定量的な嚥下機能の評価法の検討 (パイロット・スタディ):正常成人における,張力センサーを用いて測定した嚥下持続時間の信頼性と特性について
スポンサーリンク
概要
- 論文の詳細を見る
<B>1. 研究の背景と目的</B> 新生児の哺乳行動は,探索反射,吸啜反射,嚥下反射,呼吸が協調的に働くことによって成り立っている.身体の構造や機能が未熟な状態で出生する早期産児は,経口哺乳に困難さを抱えていることが多い.ことに,嚥下障害は,摂食機能の獲得を困難にする点で深刻な問題であると考えた.しかし,新生児に対して非侵襲的に嚥下機能を評価する方法は確立されていない.呼吸ピックアップ(張力センサ)を用いて嚥下に伴う頸周径の変化を記録することにより,嚥下の持続時間を測定できるのではないかと考えた.今研究の目的は,正常成人における,呼吸ピックアップを用いて測定した嚥下持続時間の信頼性と特性を解析することを通して,本測定法の有用性を検討することである.<B>2. 方法</B><B>(1) 対象と手順</B> 健常な学生16名(男性6名,女性10名))を対象に,安静座位にて,水10ml.20ml,およびゼリー8gを,それぞれ3回ずつ嚥下した時の頸周径の変化(以下,嚥下波)と,嚥下前後の呼吸運動(以下,呼吸波)を呼吸ピックアップを用いて測定した.得られた信号をA/D変換器を介してコンピュータに取り込み,呼吸波の変化と嚥下波を比較し,嚥下の持続時間を解析した.測定値の検者内信頼性を検討するために,日を変えて同じ条件で嚥下持続時間の測定を行った.<B>(2) 測定結果の統計解析</B> 各課題の嚥下持続時間の平均値を用いて統計解析を行った.各課題の初日と2日目の結果の相関係数を算出し検者内信頼性を検討した.各課題の嚥下持続時間の性差,課題間の測定値の差について統計学的に検討した.相関係数は,Spearmanの順位相関係数を用いて算出し,性差についてはMann-WhitneyのU検定を用い,測定値の差については,Wilcoxonの順位和検定を用いて解析した.有意水準0.05未満を統計学的有意と判定した.統計解析には,SPSS for Windows ver.11.0J(日本語版)を用いた.<B>3. 結果とまとめ</B> 全ての課題において,嚥下持続時間に統計学的に有意な性差を認めなかった.初日と2日目の測定結果間の相関は,水10mlとゼリーにおいて有意に強かった(水10ml:r=0.976,ゼリー:r=0.699).ゼリーの嚥下持続時間は,水10ml及び水20mlに比べて有意に長かった. 以上のことから,水10mlおよびゼリー8gといった一口で飲める量であれば,本測定法の信頼性は高いものと推察された.また,嚥下持続時間は,材料の違いを反映する可能性があることが示唆された. 今回用いた呼吸ピックアップは,頸動脈の脈波,頸筋のわずかな収縮など嚥下以外のアーチファクトも検出してしまうことによって,嚥下波の同定が困難な場合もあったため,今後は,センサーの種類等について再検討していきたい.
- 公益社団法人 日本理学療法士協会の論文
公益社団法人 日本理学療法士協会 | 論文
- 療養型病院における廃用症候群の予後予測
- 髄腔内バクロフェン治療(ITB)後の理学療法:―歩行可能な症例に対する評価とアプローチ―
- 理学療法士の職域拡大としてのマネジメントについて:―美容・健康業界参入への可能性―
- 脳血管障害患者の歩行速度と麻痺側立脚後期の関連性:短下肢装具足継手の有無に着目して
- 健常者と脳血管障害片麻痺者の共同運動の特徴:―異なる姿勢におけるprimary torqueとsecondary torqueの検討―