股、膝関節の可動域とハムストリングスの関係
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概要
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[はじめに] ハムストリングス短縮の指標として膝関節最大伸展位での股関節最大屈曲角度、いわゆるSLRがある。しかし、両側下肢の屈曲拘縮を認める患者では、膝関節伸展0度での股関節屈曲角度を計測できない。久野らは、SLRおよび股関節最大屈曲位での膝関節最大伸展角度という二種類の計測条件を用いて二関節筋の影響を示す方法を報告し、健常者における各年代別での正常値を報告している。しかし、それぞれの最大関節角度である二点間の計測のため、その間に股関節と膝関節がどのような角度で変化するのかはわからない。そこで、この研究の目的は、健常成人の股関節・膝関節伸展位から股関節を10度づつ屈曲した時の膝関節屈曲角度と股関最大屈曲位から股関節を10度づつ伸展した時の膝関節最大伸展角度を計測し、二関節筋であるハムストリングスの長さの影響を示すことである。[ 対象と方法 ]対象者は、健常成人男性4名、女性4名の計8名であり、両下肢を計測対象とした。平均年齢は25.0歳、身長は166.2cm、体重は58.6kgであった。計測方法は次の二種類で、日本整形外科学会とリハビリテーション医学会が定める関節可動域表示法ならびに測定法に基づいて、ゴニオメーターを使用し計測した。方法1の股関節・膝関節伸展位からの股関節と膝関節の計測方法(以下SLR)は、背臥位にて股関節・膝関節伸展位から股関節を他動的に屈曲し、股関節屈曲0度から90度まで10度ごとの膝関節角度を計測した。方法2の股関節屈曲位からの膝関節最大伸展角度の計測方法(以下、両関節屈曲)は、背臥位にて股関節・膝関節最大屈曲位から膝関節を他動的に伸展する。股関節最大屈曲位から股関節を10度づつ伸展し、そのときの膝関節角度を計測した。計測時、代償運動が起きないよう骨盤と対側下肢を徒手にて固定した。計測は関節を他動的に動かす人1名、固定する人1名、角度を読み取る人1名の3名にて行った。計測の順序に関しては可動域計測時のストレッチによる影響が出ないようランダムに行った。[ 結果 ]SLRの股関節と膝関節の角度の平均値はそれぞれ37.6度、4.3度であった。両関節屈曲の股関節と膝関節の角度の平均値はそれぞれ128.1度、膝関節49.8度であった。横軸に膝関節角度、縦軸に股関節角度をとりグラフにすると、SLRと両関節屈曲の時の値は一次直線で示される。一方、股関節角度が10度ごと変化した時の膝関節角度の平均値は二次曲線を示した。[考察]股関節角度が10度ごと変化した時の膝関節角度の平均値は二次曲線を示した。これは股関節と膝関節の関節軸が運動中に移動していることが原因と考えられる。今回健常成人での正常値が得られたことにより、高齢者でのデータを得ることが出来れば、屈曲拘縮がある患者のハムストリングスの短縮を推定することが出来ると思われる。
- 公益社団法人 日本理学療法士協会の論文
公益社団法人 日本理学療法士協会 | 論文
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