当院における野球肩の臨床的特徴について
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概要
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はじめに 今回、当院を受診した野球肩の臨床的特徴について調査したので報告する。対象と方法 平成14年2月から平成14年11月までに当院を受診し、理学療法を施行した野球肩40例40肩(男性39例、女性1例,平均年齢16.5±4.6歳)を対象とした。対象の有する臨床的特徴として、疼痛発生部位、投球相、及び理学所見について調査した。結果1) 疼痛発生部位は、肩後外側部が25例(62.5%)、subacromion部でのimpingementによるもの(以下IMP)が8例(20.0%)、rotator interval部(以下RI)が5例(12.5%)、広背筋(以下LD)が2例(5.0%)であった。2) 疼痛が発生する投球相は、信原分類におけるaccelaration phase(以下a期)のみが14例(35.0%)、follow through phase(以下f期)のみが7例(17.5%)、cocking phaseとf期の二度(以下c期)が7例(17.5%)、cocking phase(以下c期)のみが5例(12.5%)の順であった。部位別でみれば、肩後外側部ではc期が7例(28.0%)、f期のみが6例(24.0%)、c期のみが3例(12.0%)とf期及びc期での痛みが多かった。IMP、RI、LDではa期が12例(80.0%)と多かった。3) 理学所見では肩関節3rd.肢位内旋可動域(以下3IR)制限が35例(87.5%)に認められた。また圧痛所見はquadrilateral space(以下QLS)29例(72.5%)、小円筋31例(77.5%)、棘上筋20例(50.0%)、棘下筋13例(32.5%)、大円筋11例(27.5%)、上腕三頭筋長頭11例(27.5%)、RI 8例(20%)、肩甲下筋7例(17.5%)であった。肩後外側部の痛みを有する者は全例QLSでの圧痛が認められた。なお、MMTにおいて、僧帽筋中部線維3以下のものは23例(57.5%)、僧帽筋下部線維3以下のものは34例(85.0%)に及んだ。考察 野球肩においては、impingement syndromeがクローズアップされがちであるが、当院においてはQLSでの腋窩神経絞扼による痛みが圧倒的に多数であった。当院では高校野球選手以下の若年齢層の選手が多いことから、若い野球選手をみる際やcocking phaseやfollow through phaseでの肩後外側部痛を訴える際には本症を念頭に置く必要があると思われた。 また、僧帽筋中部・下部線維の筋力低下による肩甲胸郭関節機能低下や臼蓋上腕関節での3IR低下、QLS構成筋、rotator cuff musclesの圧痛も多数認められ、QLS syndromeやimpingement syndromeなどの野球肩を誘発する大きな要因であると考えられた。したがって、これらの改善は野球肩の予防や再発防止につながると思われ、注意すべき所見であると考えられた。
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公益社団法人 日本理学療法士協会 | 論文
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