糖尿病教育入院後の運動療法継続について:理学療法士介入前後の比較
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概要
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【はじめに】当院では糖尿病教育入院(2週間プログラム)を実施しており,平成13年5月より運動療法教育に理学療法士(PT)が介入している.内容は「治療としての運動」について啓発すると共に,個々の患者に応じた運動を処方することである.また,可能な患者については退院後1ヶ月間隔で外来フォローし,運動状況を再評価し,運動療法への執着性を維持するように努めている.そこで今回,糖尿病教育入院後の運動療法継続状況について調査し,PTの介入効果について検討した.【対象と方法】平成12年から平成13年までの2年間に教育入院を受けた糖尿病患者72名中,積極的な運動療法の適応があった35名(平均59歳)で,PT介入群(A群)15名,非介入群(B群)20名である.質問紙郵送法によるアンケート調査を実施し,アンケート結果から運動継続者と中断者に分け,PT介入が与えた影響について比較検討した.【結果】アンケート回収結果は有効解答数20であった.全体の運動継続率は75%で,継続者では退院1年後において,BMI (24.4±5.5→22.7±4.0 kg/m<SUP>2</SUP>), HbA<SUB>1C</SUB>(7.7±1.5→6.5±1.0 %)の有意な改善が認められた.一方,中断者では有意差はないものの増悪傾向にあった.中断者の運動療法の理解度は高かったが,運動中断の理由は,暑い寒いなどの季節の問題,ケガをした,家の中でできないなど多様な回答がみられた. PTが介入したA群は9名(男性6名,女性3名,平均57歳),介入しなかったB群は11名(男性7名,女性4名,平均56歳)であった.A群の運動継続率は67%(継続6名,中断3名),B群は81%(継続9名,中断2名)であり,運動療法継続率に差を認めなかった.アンケート調査は同時期に行っており,B群はA群に比較し,退院後の経過日数は有意に長かった.運動継続者について,教育入院を契機に運動を開始されたのはA群50%(6名中3名),B群33%(9名中3名)であった.運動中断者について,中断の理由,運動療法の理解度についてA群,B群に差は見出せなかった.【考察】運動療法継続者では,代謝改善に有用な運動療法が実施できており,体重や血糖コントロール状況も良好であった.中断者においては少数のアンケート回収分の中でも中断理由は多様で,画一的な指導によっては中断を回避することは不可能で,短期間の教育入院後にも定期的なフォローアップ体制の確立が重要と考えられた.本研究ではアンケートに積極的に参加してくれた患者のみを対象とした調査方法がデータに強く影響していると推察され,PTの介入効果については今回の調査では見出すことはできず,症例数を追加した上で異なる調査方法を実施する必要があるものと考えられた.
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公益社団法人 日本理学療法士協会 | 論文
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